ハラール認証取得の費用は団体ごとに違う

ハラール認証を取得しようという人に、私がまず問いたいのは「そもそもあなたの商品は本当に認証が必要ですか」ということだ。徹底的にハラールを追求する場合、例えばハラール食であれば、最初に問題になるのは食材だ。禁止されているのは豚肉だけで、牛や鶏なら食べても問題ないと思っている日本人は多い。しかし、実際はそうではなく、豚以外の肉であっても、飼育や食肉処理の方法にもいくつも注意すべき点がある。日本国内では生産者も流通量も多くないのでそれだけでかなり高くつく。醤油やみりんはアルコールが含まれているので使えない。食材がハラールをクリアしても、まだスタート地点にすら立っていない。豚を調理した鍋や釜をそのまま使うのはもってのほかだし、洗ったところで拒否感の消えないムスリムもいる。そうなるとハラール用の調理器具が必要だ。スプーンもフォークもみんな別に用意する。調理中に飛沫が飛んで混ざらないように調理場に仕切りを立てる必要も出てくる。ハラールの肉とハラールではない肉が混在しないように冷蔵庫も別々にする。もうおわかりかと思うが、店舗を1つ増やすのと変わらないだけの設備投資が必要になる。それだけの投資と見合うだけのリターンが得られるかを見極めることもなく、「取っておいたら役に立つこともあるだろう」程度の認識で動き出す人々をよく見る。今後数年でイスラム圏からやってくる観光客が増えるのは確かだろうが、急に何十倍に膨れ上がるわけではないということをよくよく考えてから認証団体を探してほしい。

現在日本に存在しているハラール認証団体は3つに大別できる。宗教法人、NPO法人、そして株式会社だ。宗教関連団体などは、必要経費に毛がはえた程度で審査してくれるところもあるし、お金はないがどうしても認証が欲しいという訴えがあれば、理由によっては無料になることもある。大規模な工場などは別だが、個人の店舗などは安ければ20万円ほどで認証を受けられる。

その一方で、京都の有名料亭がハラール認証を取得しようとしたところ、高級外車に匹敵するような料金を請求され、別の認証団体を慌てて探したという話を聞いた。要するに金のにおいをかぎつけた商売気の強い人間が、純然たる利益追求のために、ハラール認証を単なるビジネスとして取り扱っているケースがあるわけだ。認証団体がまともな団体かどうか見分ける力が必要になってくるわけだが、そもそもイスラム文化の知識が乏しければそれも難しい。