日本は「一生をかけた成果主義」

僕が「日本の働き方」と「欧米の働き方」という単純な図式を整理できたのは、大学を卒業して最初に入った企業が富士銀行だったからでしょうね。

富士銀行はご想像の通り、超がつくくらいの日本的な職能主義、長期雇用前提の会社でした。ただ、多くの人たちが誤解しているのですが、こうした日本的な会社も成果主義の会社なんです。遅速管理と言って、同期の間での昇格のスピードによって差をつけていく。社内の同期と競争することで最終的には成果に応じた処遇を実現しており、生涯賃金もかなり違う。一生をかけた成果主義ですね。

その後、僕は思いついたことを何でも提案できるベンチャー企業、日本のオーナー企業、外資系の職務主義の会社と計4社を経験してきました。それぞれの会社にはそれぞれの事業に合った文化やルールがあって、一つの改革を行うためにはそれぞれの事情を理解しなければならないことを実感として知っていきました。

「なんで日本企業の人たちってぜんぜん発言しないんですか」と外資系しか経験していない新人コンサルタントは言いますが、上司の承諾を得なければお客さまに企画アイデアを提案できない職場というものがあることを知っている僕には、その理由がよくわかります。一方で、どのような会社であっても大事になってくることも存在していて、その経験を強味として活かせば、いろんな会社に対して、適切な人事改革や研修の提案ができるのではないかと考えています。JIN-Gというこの会社を立ち上げるときも、どの会社であっても大切な人事の考え方をしっかりと持ちつつ、各社の事業に合わせた提案ができるコンサルタント集団になろうという気持ちを持っていました。

事業を立ち上げてから確信するようになったのが、先ほども言ったように、働き方を「日本対アメリカ」で語ることはナンセンスだということでした。外資系の出身者は日本の会社を批判し、一方で日本の会社は「そうはいってもこっちがいいんだ」と言っている。でも、本当にすべきなのは自分たちが何をすべきかをゼロベースで考え、日米のいいとこ取りをして、自分たち独自の人事を追求することですよね。