ところが、日本の成果主義の議論はざっくりし過ぎてきたところがあるんです。富士銀行を退職したあとに入社したコンサルティング会社では、お客さまに対して「成果主義」を導入しようとしていましたが、当時は「成果主義」とは呼んでいませんでしたからね。あの頃の課題は団塊の世代がいっぱいいて、高まり続ける人件費をいかに抑えるかが人事改革のテーマだったはずです。もう少しその人の貢献度に合わせた給与体系にしないと、国際競争の中で会社が成り立たないという問題意識の中で構造改革をしようとしていた。それをどこかのタイミングでメディアが「成果主義」と言い出して、管理職に差を付ける制度だと問題を小さくしてしまったんですね。

その時代の雰囲気に乗るように、コンサル会社に言われるがままに欧米の人事制度を真似して、余計に現場がギクシャクしちゃった会社が本当にたくさんありました。

失敗の理由は明らかでした。欧米型の成果主義人事を入れたにもかかわらず、成果責任を現場に負わせず、それを果たすための人事権などの権限も与えない――。社内の文化としては「チームが大事だ」と言っているところに、「個人が大事だ」という制度だけを入れてもバランスが取れないのは当たり前でした。文化を変えるなら、採用する人も変えないといけない。人事の主導権や権限の与え方もすべて議論した上で、現場を翻弄しないように人事制度を導入することの重要性を、そこからは教訓として学べると思います。

人事の世界は様々な人や環境が作用してでき上がっているものなので、完璧な制度なんて存在しない。会社ごとに異なるアプローチをしながら、それぞれの人事部が社内の全体を見る力を育むこと。それをいまもう一度、やり直さないといけない時期にきている。日本中に人事のプロフェッショナルを養成して、その改革を支えることで、日本の働き方そのものを良い方向へと変えていきたい、というのが僕の目標です。

JIN-G:組織人事のコンサルティングおよび人事部員向け教育事業を展開。設立は2009年。社員数9人。
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