長距離走ってわかる「シート設計」の価値
ちなみに南九州内ではコールドスタート後、すぐに目的地に着くといった燃費に厳しいドライブも多かったのだが、長距離と市街地が半々で平均18.9km/リットル。市街地のみを、長い停車時間を伴いながら走った時の燃費は15km/リットル。また、東京に帰着後、ガソリンスタンドからホンダ本社まで10kmあまりを渋滞にハマりつつ、前が空いたら遠慮なく加速というパターンを試した時の燃費が15km/リットル台後半。阪神高速の大渋滞の中では22km/リットル程度。これらの結果にかんがみれば、全開加速と急停止を繰り返したりエアコンをかけたまま仮眠を取ったりといった特殊な使い方を除いた実用燃費の下限は15km/リットル程度であろう。
アコードハイブリッドの美点は燃費以外にもある。その最たるものはシート設計で、国産車のミディアムクラスのライバルを大きく引き離し、欧州車と同等のレベルであった。シートの良し悪しは、短時間の試乗ではわからないことが多い。第一印象がダメでその後もずっとダメなもの、最初は良くてもだんだんダメさがわかってくるもの、反対に最初は大したことがないようでも実は長時間運転でも身体への打撃を最小限に抑えるもの、最初から最後まで素晴らしいもの――。
アコードハイブリッドのシートは3番目のパターンだった。北米向けのミディアムクラスセダンということでサイズ感はもともと申し分ないのだが、タッチについては最初、アベレージレベルに感じられた。が、3時間、4時間というタフな連続運転を行ったり、長距離移動も終盤に差しかかって疲れが蓄積しているようなときも、体が触れている部分がうっ血するようなことがなく、疲労を最小限にとどめてくれた。シートの骨格部分や体重を支えるウレタンの剛性を高め、そのうえで表皮のレザーとウレタンの間に低反発部材が仕込まれているようで、その構造が功を奏しているのではないかと思われた。
ハンドリングもプレミアムセグメントのモデルを除けばクラス随一のレベル。九州山地奥部のタフな山岳路でも1.6トン台の重さをモノともせず、走りたいラインを思い通りにトレースすることができた。この特性も、ドライブの距離が長くなるにつれて、疲労の軽減に着実に効いてくる部分だ。
このように、優れたポイントがいくつもあるアコードハイブリッド。これらの美点だけを見れば、ベストセラーモデルになっても不思議ではないくらいなのだが、実は同じくらい欠点も抱えている。