次に、大きな変化として挙げられるのが、09年にオープンした「MAZDA Zoom-Zoom スタジアム 広島(通称ズムスタ)」の存在である。キャパシティは旧広島市民球場とほとんど同じだが、開場以来、1年あたりの観客動員は1.5~1.7倍で推移している。
ズムスタは、カープファンの野球観を一新させた。そこは、メジャーリーグのスタジアムを参考にしたことで、日本では類を見ない“ボールパーク”の魅力を放っている。なかでも特徴的なのは、自由に球場を一周できるコンコースだ。8~12メートル幅もあるこの通りは、どのチケットでも歩くことができる。つまり外野席のチケットでも、立ち見ならバックネット裏で観戦できる。あるいは、球場を回遊しながらの観戦も可能だ。ズムスタは、新しいプロ野球観戦の方法を提示したのである。
これによって客層も変わった。若い女性が確実に増えたのである。しかも、女性だけで連れ立って球場に向かう姿も目立つ。それは、10年前にはなかなか見られなかった光景だ。広島市民球場運営協議会の調査でも、観客の約40%を女性が占め、20%強が20代以下だという結果が出ている(※2)。つまり、観客の10%弱が若い女性なのである。
そして、最後に挙げられる大きな変化は、やはり好調なチーム状況である。近年、エースの前田健太を中心に、若手選手が次々に成長した。結果、昨年は16年ぶりのAクラス入りをし、今年は優勝争いを繰り広げている。ファンは、確実に強くなったカープを応援している。
経営努力・新球場・チームの好調――この3つの変化によって、カープは長いトンネルを抜け出たのである。東京にカープ女子が増えたのも、要因をたどるとこの10年間のカープの変貌に行き着く。