コンニャクも度を超して食べると

食中毒ならぬ水中毒に罹ったのは初めてで、しかもわが人生で後にも先にも最悪の激烈さであった。コルヒチンの副作用下痢も酷いが、2、3日で治るし、現在の私のようなベテランは下痢する前に服用をやめる。この水中(みずあた)りは、完治に2カ月もかかってしまった。

下痢をすると体重が減りそうに思えるが、それは錯覚で、ほとんど減らない。(※個人的な感想です。以下同)

ダイエットをしているとき、どうしてもラーメンとかスパゲッティを食べたくなって、自分を抑えられなくなったら、私は糸蒟蒻を用いることにしている。カレーは、そのものが高カロリーなので禁忌であるが、我慢できないときは、ライスを糸蒟蒻かキャベツの千切りで代用する。

糸蒟蒻はカロリーゼロなので、いくら食べても太る心配はない。だからといって、調子に乗って毎食毎食しらたきにして、それを10食くらい続けると、下痢をする。(※)

さて、振り返ってみるとスペイン放浪の頃の私はいかにもコドモであった。その後、イアン・ギブソン『ロルカ・スペインの死』やジョージ・オーウェル『カタロニア讃歌』はたまた堀田善衞『ゴヤ』など読んで少しはオトナになり、いまでは「酔いどれ」なる冠を戴く立派なオヤジと化している。

スペインで体感した激情と倦怠、アラブやアフリカまでも内包した混沌と複雑さに思いを馳せるとき、ブドウを原料としながらもワインにもブランデーにも属さず、独自のポジションにあるシェリーがオーバーラップする。この国を象徴する酒ではないだろうか。

秋の日に「アランフェス協奏曲」だの「アルハンブラの思い出」など聴いて、ひたぶるにうら哀しくなると、つい、憂いをおびた双眸とか細くしなやかな薄墨色をした髪などが回想されて、結局、行きつくところはそこかい、と情けない自分を嘲笑しつつ、シェリーをあおるのである。

(佐久間奏=イラストレーション)
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