9割まで待っていては手遅れになる

もともと「孫の二乗の兵法」の中で、僕は「3割以上失うリスクがあるときは撤退すべき」と述べています。

戦略を実行に移すタイミングで最適なのが、7割の勝率が見込めるときだと僕は考えます。勝率が9割になるまで待つと、手遅れとなり勝利のタイミングを逸することもある。かといって勝率7割以下、つまり3割以上のリスクを冒してはいけない。なぜなら、もし失敗しても、一目散に逃げれば全滅せずにすみます。トカゲの尻尾も、切れるのが3割ぐらいなら、また生えてくる。でも、半分切れたらはらわたまで切れて死んでしまいます。だから大事なことは、ビジネスを無鉄砲な意地でやってはいけないということ。いざというとき、退却できない人はリーダーではないのです。

しかし正直に言えば、ソフトバンクがブロードバンド事業に力点を置くことは、明らかにリスクがその3割を超える危険な行為でした。もちろん速くて安いブロードバンドを待ち望む潜在的なニーズは冷静に分析しましたが、このときは自らの掟に背いて、あえて前へ前へと突き進んだのです。

「生き残るために、自己増殖と自己進化を繰り返す」。それこそがソフトバンクの生きる道です。