孫正義氏がこれまでに経験したタフな場面をケーススタディの形で完全再現。
あなたは正しい判断を下せるだろうか。

Q. 顧客情報が盗まれて1500万円要求

2004年、従業員が関与する顧客情報漏洩事件が起きる。さらに、顧客情報を得た反社会的組織が1500万円の支払いを要求してきた。事件が公になれば企業としての信頼はガタ落ち。事件を隠蔽するため要求に従うか、それとも拒否するか。

【A】支払う【B】支払わない(正答率99%)

「まさか、ウチの社員が……」

ある日、社員が不祥事を起こしてしまったというケースです。何も言い訳ができない完全なミステーク。予期せぬ事態ですが、何か手を打たねば。たちまちマスコミが群がってくるに違いありません。

そこで考えられるのは、まず、バッシング報道のリスクを回避する手だてを、すぐさまひねり出すこと。もうひとつは、迷惑・心配をかけた顧客などへの説明を最優先すること。注意が必要なのは、顧客へ説明すると、さらに報道リスクが高まることです。根掘り葉掘り聞き出され、ネガティブ記事が噴出して大打撃を受けるかもしれない。

04年1月、ソフトバンクの約452万件の顧客情報が不正に盗まれ、外部へ漏洩してしまいました。顧客情報を盗んだ社内の人がそのリストを反社会的な組織に売ったことにより、今度はその組織の人が顧客情報をもとに、ソフトバンクに直接、1500万円の現金を要求してきたのです。

明らかな恐喝行為です。このとき警察に届け出ず、裏で取引をすれば報道されるリスクはほぼなかったでしょう。しかし、僕たちは1500万円の請求を拒否し、警察に即刻届け出て顧客情報を取り戻すことを最優先しました。