お詫びの気持ちは事業で伝える

この一件を契機に、変更した社内ルールがあります。それはいわば性善説から性悪説への転換というべきものでした。

事件前までは、顧客満足を追求する一方で、情報の管理が甘くなっていたのは事実です。「社員を信じる」というのは僕の信条で、それ自体は間違いではないと思います。しかし、こうした事件が起きてしまった以上、仕方がありません。社員を疑うのは本意ではありませんが、顧客情報を守るのは何よりも重要です。

そこで、とりわけ顧客のデータベースシステムに関わる人に対しては、性善説で接するのではなく、厳格な管理をしていこうと決めました。

具体的には、ユニホームや衣服はポケットなしのみ着用OK。指紋チェック。IDの暗号化。24時間監視カメラ。金属探知機の設置。携帯電話や撮影機能付きのツールの持ち込み禁止。さらにメモ用紙などいっさいの手荷物を許可しない。当然のことながら、データベースの入った端末にはUSBなど外部記憶装置も付けることはできないし、コピーもできない。

顧客情報にアクセスできる人数も135人から3人へと大幅に減らし、今も全社員に対して個人情報保護教育を実施しています。今では、「世界一のセキュリティ」と胸を張って言えるほど、個人情報を徹底管理するオペレーションになったと思っています。

事件後の記者会見で、記者は僕の責任問題を追及しました。私はそれに対し、こう答えたのを覚えています。

「私はこれまで以上にブロードバンド革命を推進していきます」

引責辞任する気持ちはありませんでした。むしろ、事件の反省を踏まえ、世界一速くて安い高速ネットワークの快適さを享受してもらうことがソフトバンクの使命であり、お詫びの気持ちを形でお見せすることになると考えていました。

社員の不祥事だけでなく、「悪いニュース」に対してはとにかく逃げない。むしろ真っ正面から受け止めれば、その後成長していくための糧となるのだと思っています。