10年に発表した「新30年ビジョン」でソフトバンクの時価総額を30年以内に200兆円にすると言いました。僕、本気です。そのエネルギーはどこからきているかといえば、あのおばあさんの言葉です。

僕は僕を信じてくださった人々を裏切りたくない。株価がピークのときに買った方がそのまま売らずに持ち続けてくださっているのなら、少なくともその10倍にしてお返しをしたい、という思いがあります。

もちろん株式に投資する人には、株価が下がった場合、投資額以上のお金を返す、といった条項は存在しません。でも、そんな契約ではなくて、心意気なんです。

ですから、「情報革命で人々を幸せに」というビジョンを形にしていこうとするプロセスの中で、そのためなら株主を犠牲にしていいのか、社員や取引先を犠牲にしていいのか、といえばそれではやはりいけないと思うんです。

僕は、ソフトバンクを下支えしてくれるすべての人の信に報いたい。だから、時に針のむしろ状態に置かれ、四面楚歌の苦しい局面であっても、志を貫き、頑張り抜かないといけない。

短期的には紆余曲折があります。でも、50年、100年たってふりかえって理解されればそれでいいのではないかと僕は思っています。

「日本をブロードバンド先進国にしよう」「インフラを持つ既存企業がやらないのであれば、われわれがやるんだ」

もちろん、インフラを押さえることがビジネスとして非常に重要になるという読みもありました。

毎日消費されるものにかかる費用は莫大です。電車や高速道路のような、常に場所代をもらえるインフラビジネスこそ最優先されるべきもの。ブロードバンド路線を推し進めることが自分のやるべき使命だ。そう信じていたからこそ僕はあのITバブル崩壊の厳しい経済環境の中、全エネルギー、全財産を費やすことができたのです。