31年のサラリーマン人生のうち、18年はNPO運営との両立を続けたことになるが、会社に何らかの貢献をしているかもしれないと思えるようになったのは、05年に「森の町内会」を始めてから。これは間伐促進費(紙代の10%)を上乗せした「間伐に寄与した紙」を企業に買ってもらうことで、森林の育成と林業の活性化を支援する新たな活動だ。
現在、紙を購入してくれる「間伐サポーター企業」は83社。2008年は、約26ヘクタールを間伐できる促進費が集まり、岩手県岩泉町などで間伐が進む。
「森の問題や林業の再生は、紙のリサイクルよりも根元的で重要な問題。それに挑戦していることが、会社にとってもプラス評価につながるかな、と。経済的な理由で間伐が行き届かず、機能が低下した森林を何とかしたいんです。木を伐って使い、植林するというサイクルが大切なのに、『木を使うことは悪いことだ』という間違ったイメージが広がっている。このマインドを改革したい」と意気込む。
また、森の町内会モデルを自治体が採用し、地元の林業の再生を目指す動きも出てきた。2009年9月には、静岡県と浜松市で取り組みが始まり、他地域からも問い合わせが相次いでいるという。
革新的なビジネスモデルで世の中を変えてきた半谷さんは、日本人の新しい働き方の先例でもある。「誰かのためになる」。そう信じて仕事をすることは、自分も幸福にする。そして私たちはそんな「働く幸せ」を求めている。今回の取材を通じて、それを痛感した。
※すべて雑誌掲載当時
(川本聖哉=撮影)