京セラ発のフィロソフィと部門別採算制度という2大稲盛メソッドをKDDI、JALだけでなく国内外のあらゆる企業・団体が採用を開始。加速度的にコストが下がり、飛躍的に業績が上がる奇跡の現場に密着。

※第1回はこちら(http://president.jp/articles/-/13116)

機長の荒川里留にはもう一つ、意識が変わった面がある。それはフィロソフィの中で「一番好き」と答えた「最高のバトンタッチ」という言葉に端的に表れる。

「今まではわれわれ運航乗務員がお客様を運んでいるという意識があり、横のつながりが弱かった。本当は、各部署が役割を担い、最終的な段階でわれわれのところにお客様が来られる。だから、最高のフライトを提供しなければいけない。そう考えられるようになりました」

霜鳥真一さんはこの道20年以上の整備士。塗装に使うハケや、部品の油を拭くウェスを以前より大切に扱うようになったそうだ。

と荒川は「最高のバトンタッチ」の意味を話す。「社内がバラバラで横の連携が取れていない」。稲盛が会長職に着任して感じた問題点が今、改善されつつある。それを象徴するものを見せてくれたのが、整備部門の改善チームで事務局を務める整備士歴27年の霜鳥真一だ。

「見てください。これ、もとは1枚のTシャツだったんです」

霜鳥は現場で使うウェス(機械の清掃用布)を組み合わせ、もとの形に戻してみせた。整備部門からの呼びかけで、運航本部や客室本部など他部門が部内で古着を集め、送ってきたものだ。

「半年で250キロ。これでほとんど間に合い、年間約100万円の節約です。整備はコストの塊で、ある意味ないほうがいい部門だからこそ、削減しなければという意識が強くありました」

備品代40万円が400円に!

「軍手一組11円」「ハケ88円」。JALの整備現場はスーパーの店頭のように品目ごとに値札が張られたり、使い捨てだった用具を再利用に変えたりと、コスト削減の風景がテレビでもたびたび報道されてきた。

「特に心がけたのは、浮いた分を数字にして開示したことです。すると、自分の努力で『10円浮いた!』とガッツポーズをとるヤツもいたり。暗いイメージのコスト削減が楽しくなった」