CAの機内販売「センター争い」

また、「客室乗務員と地上スタッフの関係もすごく変わった」とCAの垣貫は話す。

「以前は『搭乗は何時何分にお願いします』といわれ、機内準備が終わっていないと『無理です』と返していたのが、今は互いに状況を共有しながら、『では目標は何時何分にしましょう』と、密に連携が取れるように変わりました」

地上スタッフの高瀬も、「前は話が通じなくて、急かせてきつく当たってしまうことがありましたが、最近は気を使えるようになっています」

顧客と接するCAや地上スタッフたちは今、経費削減のみならず売り上げ増の取り組みにも力を入れている。CAが行う機内販売では、「商人(あきんど)」を意味する「AKD」と名づけた部内キャンペーンを展開。便ごとの月別目標を決め、売り上げ成績優秀なCAをAKB48のように「センター」として表彰する。機内販売向けの商品企画にも参加しているCAは有能なセールスウーマンでもある。

地上スタッフは国内線の場合、普通席よりワンランク上のクラスJやファーストクラスに空きがあれば、受付カウンターや搭乗口で案内し、顧客に勧める。勤務が3部シフト体制の羽田空港では、月ごとにシフト別対抗で売り上げを競い合いながら、拡販意欲を高めている。

さらに機長もリピーターを確保しようとする意識が高まった。

「300人乗れば、何人かは飛行機が初めての方がいます。印象がよければまた乗っていただける。だから機内アナウンスも定型文ではなく、自分の言葉で語る。機材トラブルで出発が遅れそうなら、機長が自ら、説明を行う。もう、コックピットにこもったりはしません」(荒川)

稲盛も以前、乗客としてJALを利用した際、乗務員の「プライドの高さ」やある種の「傲慢さ」が鼻についたというが、今はその姿はどこにもない。

「一人ひとりがJAL」「ベクトルを合わせる」――誰もが経営者の意識を持ち、同じ目標に向かって仕事に当たる。稲盛が求める「全員経営」を社員たちは実践しようとしている。