改善の対象は行動の仕方にも及んだ。
「例えば、動線です。1分かかって取りにいっていた道具を何とか近くに持ってきて動線を半分にすれば、往復1分短縮できる。1年分の人件費に換算し、人数分かけると大きな数字になる。面白いのは、誰かが発案して成果が表れ、火がつくと、一気に広がっていくことでした」
整備士は元来、手仕事が好きなのだろう。他部門から依頼された修理や壁のペンキ塗装、モックアップ(模型)の製作など、終業後や週末にボランティアで引き受けることも多い。ある部門で使用するシュレッダーが故障した際、新品を購入すると40万円かかるが、整備士が秋葉原で400円の部品を購入して修理したこともある。
こうした部門横断の支援依頼は、社内のイントラネットを通じて行われる。客室本部は子供のいる社員から、子供客用に、読まなくなった絵本を募集した。
「絵本を購入していた破綻前より種類が増えお子様連れのお客様に好評でした」(CAの垣貫妙)。
機長の荒川によれば、「横のつながりが強まったのは、フィロソフィ教育の場でいろいろな部署の人たちと話し、互いの誤解が解けたりしたことも大きい」という。フィロソフィ教育とは40の言葉から毎回一つ取り上げ、少人数に分かれて学び合う場だ。1クール3カ月で年間4回。各自都合のよい日に参加する。少人数分けは部門横断。若手と社長が一緒になることもある。その場でどんな誤解が解けるのか。荒川が話す。
「例えば、運航乗務員が何かの都合で遅れて機内に入ったとき、事情を知らない地上スタッフがお客様はいつ搭乗できるか聞いてくる。こちらもやることがあるので、従来は『ちょっと待って』としかいわなかった。それが対話の場が持てたことで、お客様に説明が必要な地上スタッフの立場も理解できるようになり、『これくらいだったら大丈夫』と具体的な時間をいえるようになりました」