漁獲規制ができない現状を憂えるべき

世界の大規模ウナギ資源は、我々日本人が、あらかた食べ尽くしてしまいました。「国産が無くなれば、輸入すればいい」というこれまでのやり方は、すでに破綻しています。ヨーロッパウナギを食べ尽くしたときのようなペースでウナギを食べ続けることは不可能です。安売りできるウナギは、どこにも存在しないので、10年前のような安い値段に戻ることはあり得ません。天然ウナギに頼らない完全養殖は、実用段階ではありません。今後は、危機的な状況にあるニホンウナギを利用するしか選択肢がないのです。

ウナギの価格はこれからどうなるのでしょうか。それは、我々の行動にかかっています。今の漁獲圧は、ウナギ資源にとって非持続的です。このままの漁獲を続ければ、今後もウナギ資源は減少し、ウナギの価格は上がり続けるでしょう。超高級品どころか、いくらお金を出しても食べられない日がいずれ来るかもしれません。

筆者は、ウナギ資源を回復させるために、漁獲規制と河川環境の修復を早急におこなうべきだと考えています。漁獲規制を行えば、一時的に漁獲量は減り、価格は上がります。しかし、資源が回復すれば、今よりも多くのウナギを、適正価格で、持続的に食べることができます。

日本人の多くは「高くなるから」「食べられなくなるから」と漁獲規制に消極的ですが、そうではありません。規制が無かったから、ウナギが獲れなくなってしまったのです。もし、ウナギをこれからも食べ続けたいなら、漁獲規制の心配をするのではなく、国内外の専門家から絶滅危惧と判断されているにも関わらず、満足な漁獲規制が導入できない現状を憂えるべきです。江戸時代から続くうな丼文化を、子の代、孫の代まで、残したいものです。

※1:中日新聞「シラスウナギ豊漁の気配 うな重お手ごろはまだ先?」(1月31日付)、日本経済新聞「ウナギ稚魚価格、昨年の4分の1漁獲量が大幅増」(2月4日付)、読売新聞「シラスウナギ漁獲量回復 丑の日値下がりも期待」(4月11日付)
※2:毎日新聞「(IUCNは)ニホンウナギの減少が、東南アジアを原産地とするビカーラウナギなど異種のウナギの取引増加を招いているとし、ビカーラウナギも準絶滅危惧種に指定した。」(6月12日付「ニホンウナギ:国際自然保護連合が絶滅危惧種に指定」)

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