今後、鉄道会社が果たす役割は大きい

――今後の成長戦略はどのように考えていますか。

【真鍋】北陸新幹線の開業、関西圏の活性化、そして鉄道でいうと新幹線です。新幹線は来年春には、北陸新幹線が開業しますから、東京から富山、金沢の私どもエリアに来られるお客様のマーケットが大きくなる。さらに関東からだけではなく、関西から北陸に行き、長野、新潟方面に動くお客様を増やす必要がある。そうやってマーケットをさらに大きくする。

そういう意味では、旅行での「動き方」のご提案をする。例えば、東京、大阪から金沢に行った人は能登半島方面への動き方、五箇山、白川郷、高山などの岐阜方面への動き方、さらに永平寺、恐竜博など福井方面への動き方など、いろいろな旅行ルートを提案していかなければなりません。

さらに鉄道だけではなく、地元のバス会社にご協力いただく。例えば、富山から能登半島へはバスで和倉温泉に寄る。和倉―金沢間は特急列車も走りますが、観光列車を走らせようと考えています。富山―金沢間は新幹線もありますから、和倉、富山、金沢間を三角形で描くように動いていただくような提案もできます。たくさんの「動き方」を増やしていく。

また「地域共生企業」となることを中期経営計画に掲げていますが、食べ物、宿、伝統芸能などをテーマに地域と一緒になって、お客様を呼び込んでいく。そうやって長期にわたってお客様が集まるような方向に持っていくのがこれからの戦略です。

鉄道ではもう一つ近畿圏が挙げられます。なかでもアーバンネットワークと呼んでいるエリア、とりわけ大阪の環状線をブラッシュアップしていく。東京は「都市型観光」で、全国からいつ、誰が来ても何かがあります。私どもも「マイ・フェイバリット関西」というWEBで大阪に来ていただいた人に楽しんでもらう情報を提供しています。京都にはもの凄い数の喫茶店があります。観光してくつろげる所がパンフレットや雑誌に掲載されている。大阪という街は意外とそういった紹介がありません。せっかく淀川が流れ、淀屋橋、中之島などは景色もいい。大阪城もあり歴史も町人文化もしっかりと息づいている。そうした観光資源に光を当て、一息つける場所も併せて、一生懸命宣伝しているわけです。

今後、日本の人口が減少していくなかで、地域振興と観光資源の掘り起こし、海外からの旅行者の受け入れ、地域交通の問題など、鉄道会社が果たすべき役割はますます大きくなっています。

真鍋精志(まなべ・せいじ)
1953年、香川県生まれ。東京大学法学部卒。76年日本国有鉄道入社。87年西日本旅客鉄道(JR西日本)。2003年執行役員財務部長。常務執行役員・総合企画本部副本部長、代表取締役副社長兼執行役員などを経て、12年社長就任。
(熊谷武二=撮影)
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