変化に耐える免疫力とは

【徳重日本に帰ってくる度に、やれグローバルだ、グローバル人材だ、と言っているのを耳にするわけですよ、この2年間ぐらい。一方で、潔癖主義の日本の社会で育った日本人に雑菌の中に飛び出せっていっても無理なんですよ。アジアって健康的、生物学的にも雑菌だらけなんですね。ビジネス的にも雑菌とかリスクだらけなんですよ。そのせいかどうかはわかりませんが、外の環境に曝露することに消極的な姿勢が日本人には目立ちますよね。グローバル人材がどうだとか、メンタル的にどうだとかいう前に、外の環境に出ていけるのかというのが一つ大きな乗り越えるべき壁だと思いますけどね。

海外では生活だけではなくて、ビジネスでも思うようにいかないことだらけなんですよ。日本にいる限りはあり得ないことだらけの中で最初はストレスを感じるんですけど、うまくコントロールしながら、周りを巻き込みながら結果を出していけば経験になる。だけど、今の日本社会を見ていると、海外でビジネスをする環境に合わない人がどんどんとつくり出されているような感じがします。

【窪田どこの国にもその国独自の特徴はあるのですが、日本はかなり特殊な環境を持っている。そこから違った環境に自分を置いて、どこまでサバイブしていけるかが挑戦ですね。言語面でも文化面でも生活面でも。

なるべく若いうちに勝手が違う厳しい環境に身を置いて、ギャップにショックを受けながら許容していく。ショックを受けて挫折を経験するもよし。安定した潔癖な環境で長くいればいるほど、適応力が麻痺してしまう。

世界に出れば自分が育った環境では想像できないような異質な考え方をする人だらけで、それは変えようがない事実です。東南アジアの国々が日本みたいな国になることを望んでも、それは起こり得ないわけです。でも、異質な人たちとビジネスをやることによって新たな価値を生み出すことができる。自分たちが適応できる強さを持つことが世界で生き抜く武器になるんです。

今の日本でも自分は十分にやっていけると思う人は少なくないでしょう。そこにプラスアルファで少しずつ新しい環境に足を踏み入れていく。大丈夫だと思える環境を広げていく力をつけることができれば、その人の可能性は伸びると思います。

窪田 良(くぼた・りょう)●1966年生まれ。アキュセラ会長・社長兼CEOで、医師・医学博士。慶應義塾大学医学部卒業後、同大学院に進学。緑内障の原因遺伝子「ミオシリン」を発見する。その後、臨床医として虎の門病院や慶應病院に勤務ののち、2000年より米国ワシントン大学眼科シニアフェローおよび助教授として勤務。02年にシアトルの自宅地下室にてアキュセラを創業。現在は、慶應義塾大学医学部客員教授や全米アジア研究所 (The National Bureau of Asian Research) の理事、G1ベンチャーのアドバイザリー・ボードなども兼務する。著書として『極めるひとほどあきっぽい』がある。 >>アキュセラ・インク http://acucela.jp
(柏野裕美=構成)
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