力強い腕の振り、目線の気配りで自信をアピール
バラク・オバマ大統領は、肩の上まで手を上げ、「国民の皆さん」と呼びかける演説スタイルで有名です。
安倍首相の場合、前出のグラフからも、期を追うごとに力強い腕の振りの回数がどんどん増えてきているのが見てとれます。
06年の所信表明演説は0回、13年1月は6回、そして同年9月のオリンピック招致プレゼンではなんと76回でした。
腕の振りの大きさについても、第1次のときの腕の動きに比べると、第2次の初期の演説では少し大きくなっています。
この腕の振りが最大になったのが、オリンピック招致プレゼンのときでした。このとき、安倍首相は両手のひらを肩より上まで上げ、ひじを少しだけ下げ、聴衆をこちらに抱きかかえるほど胸を張って、両手を差しのべる形を何度も取りました。この動きが、「次は何を言ってくれるのだろう?」と、聞き手の関心を呼ぶ動きなのです。
腕の動きの大きさは、通常本人の「自信」の大きさに比例します。皆さんも自信を表そうと思ったら、まずは演説の最中、演台や机に両手を置いて体重を支える姿勢をやめましょう。そして、原稿を見ずに両腕を自由にして、必要に応じてパワフルにアーム(腕)を動かせるように練習しましょう。
原稿を読み上げると、どうしても相手とのアイコンタクトが取りにくくなります。
私の実験室データでは、日本人二者間の1分間の対話時間の中で32秒以上、つまり話している時間全体の53%以上の時間、相手を見つめていると説得力が出るというデータがあります。ところが、手元の原稿を読んでしまうと、どうしてもそこまで相手の顔を見ることができなくなります。
長々しい原稿を書いてしまった場合、または母国語でない言語で話す場合、なかなか暗記できないので、原稿を見る回数が余計に多くなってしまいます。
第1次と第2次安倍内閣の所信表明演説を比べると、後者は文章のフット(長さ)が短くなっているのが顕著です。3行も4行も続くような長文をつくってしまうと、暗記ができません。したがって、つい原稿に目を落とそうと下を見てしまいます。
安倍首相の13年の演説では、1文ずつが短くなっているので覚えやすく、いちいち手元の原稿に目を落とさなくても話すことができたのです。