英語のプレゼンテーション能力を身につけることはビジネスパーソンにとって極めて重要な課題だ。しかし、単に語学力を身につけるだけで事足りるわけではない。語学力を含めたグローバル人材の要件とはなにか。組織と人に関して世界的視座から提言を行うグローバルコンサルタント・船川淳志氏にうかがった。

言葉への感受性を磨くことは
プレゼンテーションの掟

グローバルインパクト代表パートナー
船川淳志●ふなかわ・あつし
慶応義塾大学法学部法律学科卒業。東芝、アリコ・ジャパン勤務の後、サンダーバード校にてMBA取得。その後、米国シリコンバレーを拠点に組織コンサルタントとして活動。帰国後、グロービスのシニアマネジャーを経て、人と組織のグローバル化対応を支援するコンサルティング会社、グローバルインパクトを設立。著書に『Transcultural Management』(米国Jossey-Bass出版1997年)、『グローバルリーダーの条件』(大前研一氏との共著、PHP、2009年)等多数ある。

「グローバライゼイションを意味する中国語は『全球化』です。かつてのように北半球や西側先進国のエリアだけで結ばれてきた相互のつながりが、現在は、東側各国、ひいては南半球まで、まさに全地球的に進展しています。国や地域の間で相互のつながりや相互依存性が高まる環境下では、そのつながりや依存といった関係性について業界特性は見逃せません。業界ごとに特色があるということです。ただし、そこで働く人々に、基本として求められることもあります。それは、いつでも、どこでも、どこの国の人々とも一緒に働けること、です」

そのために、どんな能力が必要か。船川氏によれば、基礎的な力は英語ではないという。

「視野の広さや視座の高さも大事ですが、基本的には、アタマの中をフル回転にして、自分の持っている参照できるメモリーにアクセスして、それを適切に言語化できるかが問われます。同時に、自分の発した言葉をモニタリングする能力も必要なのです。つまり、言語化する能力だけではなく、聴衆と自らを観察する能力です。これは、対人関係能力に影響します。わかりやすく言うと、相手に想いを馳せられるかどうかということ。グローバル人材には英語で行うプレゼン能力が必須ですが、英語に飛びつく前に、こうした『英語以外』の能力が大きくものを言います」

どういうことなのか。

プレゼンは一対一ではなく、一対n、つまり複数の人を相手に行うものだから、対人関係能力が大切になるということなのだ。

「一対nのコミュニケーションでは不用意なひと言で相手を傷つけたり、聞いている人同士の間に摩擦を引き起こしたりすることもある。ですから、自分が使う言葉に対する感受性を常に磨くことが求められます。話者は、話したいことについて遠慮をする必要はない。しかし、その内容はよく熟慮し、聴衆に対する配慮を欠かすべきではないのです」