一家で複数の国籍を持つ台湾人もいる

中台の経済関係を評価するとなると、現状は台湾の大勝利と言える。数多くの台湾企業が大陸に進出して、チャイワン(台湾+中国)の強みを存分に発揮している。中国大陸からアメリカに向けて輸出している会社のトップ100を取れば、半分以上が台湾系の企業になるだろう。

筆頭は世界最大の電子機器のEMS(受託生産)メーカーであり、大陸だけで50万人以上を雇っているフォックスコン(鴻海科技集団)だ。

中国企業にしても、日本やアメリカブランドのOEM(製造請負)は行っている。しかし海外に自分で売り込むほどの力はない。台湾に乗り込んで成功できるほどの経営力を備えた中国企業はまだ少ないのだ。

経営力、技術力、資金力……あらゆる面で台湾企業は中国企業を凌駕している。特に人材においては、台湾はまったく中国を寄せ付けない。

たとえばアメリカのシリコンバレーで起業してIPO(新規株式公開)まで持っていった台湾人は大勢いる。シリコンバレーでIPOを果たした創業者の数を国別に数えて人口で割ると、1位はイスラエル、2位が台湾で、3位がインドだ。

ちなみに中国本土から渡ってシリコンバレーで成功した中国人は一人もいないし、IPOまで持っていった日本人もいない。

中国のネット大手、アリババ社がニューヨークでの上場を予定しているが、CEOのジャック・マー(馬雲)は、アメリカで学んで中国本土で起業したにすぎない。

台湾に優秀な人材が多い理由は、明日をも知れない危機感に満ちているからだ。いつ中国に呑み込まれるかもしれない緊張感に常に身を置いている台湾人は、一家で複数の国籍を持っているケースが少なくない。娘にはカナダ国籍、長男には中国籍、次男にはオーストラリア国籍という具合に、どう転んでも生き延びられるように備えているのである。

世界のどこに行っても通用するように英語、中国語、日本語の3カ国語を勉強するからコミュニケーション能力は抜群だし、理系の大学院で科目を取れば徴兵制が免除されるということで、理系に進む学生も多い。