脳裏に焼きつく表現とテンポ
リチャード氏のプレゼンでは、まずはシンプルなスライドが印象的だ。それぞれの項目に登場するイラストの“人”は、誰もが自分を投影しやすい“人型”であり、基本色は黒と赤の2色。その人型がどこかコミカルかつアクティブだ。そこに必要な文字だけが書かれ、「押す」「熱意」など伝えたいことが直観的にわかるようになっている。スライドだけでも、ポイントは聞き手の脳裏にしっかり焼きつくだろう。
直観的なスライドに加えて、使う言葉は短く、テンポも歯切れもいい。以前に人前で伝えることが上手な人に“紋切型”が多いと書いたが、一言で聞き手の脳裏にパッと飛び込んで興味をもたせ、テンポよく言葉を発して引き込んでいく。たとえば、以下(i)のリチャード氏と、(ii)のよくありそうな一般的な表現を比べてみよう。
(i)「自分を後押ししよう。 物理的にも、精神的にも押す! 押す! 押す!」
(ii)「努力を重ねて自分を後押しする何かを見つけよう。物理的にも、精神的にも前に進む原動力を見つけることだ」
……ほかにも言い方はいくらでもあるが、たとえば「前に進む原動力」をジョン氏のように「押す!」のひと言に集約してみると、効果的でインパクトが出る。場面に合わせた表現で、いかに相手の記憶に残すかがプレゼンのひとつのカギになるだろう。
そして、ジョン氏はすべての一言に成功者たちの言葉に裏付けを付している。たとえば世界的なメディア王のルパード・マードックに、成功に必要なのは「働くこと」と言わせることで、言葉に重みをもたせる。たとえばこれが「夢を追う」なら、ウォルト・ディズニーのほうがイメージにピタリとハマるかもしれない。では、ジョン氏が、本論部分で8つの言葉をどのように提示していくかを、かいつまんでみていこう。