子孫に対する親としての本当の誠実さ

もちろん、家族を思いやる気持ちは尊いものです。「子どもや孫に、少しでも楽をさせてやりたい」と願うのは、親として自然な感情でしょう。

ですが、親から受け継いだ遺産が、本当に子どもたちの「幸せ」につながるのでしょうか。

幕末の英雄・西郷隆盛は、「児孫じそんのために美田びでんを買わず」という言葉を残しました。

自分の子どもや孫のために、立派な土地(財産)を買い残すようなことはしない、という意味です。目先のお金を残すことが、子孫の本当の幸福にはならないことを見抜いていたのでしょう。

世界的なアクションスターであるジャッキー・チェンのエピソードも、じつにイカしています。俳優や歌手として芸能界で活動している実の息子・ジェイシーに対して「私は自分の財産を1円も遺すつもりはない。すべて社会に寄付する」と公の場で堂々と宣言。その理由として、こう語っています。

「息子に能力があるならば、私の金を頼らなくとも自分でいくらでも稼げるはずだ。逆に、もし彼に人生を生き抜く能力がないのだとしたら、私の遺産をただ無駄に浪費して、彼の人生を台無しにするだけだろう」

これぞ、親としての本当の誠実さであり、最高の教育ではないでしょうか。

3世代の家族
写真=iStock.com/Zoey106
※写真はイメージです

僕自身も、まったく同じ意見を持っています。

「人は人、自分は自分」というポリシーは、我が子に対しても同じです。

子どもに老後の面倒を見てもらおうなんてこれっぽっちも思っていませんし、子どもたちに財産を遺そうという気もありません。

「僕は僕の人生を生き切るから、あなたはあなたで自分の人生を生きていきなさい」というスタンスです。

ポケットに残った最後のコインの使い方

ですから、自分が病気になったり、介護が必要になったりした場合の資金はとっておいて、自分で稼いだお金は、生きているうちにきれいさっぱり使い切って死にたい、というのが僕の理想です。

極端な話をすれば、ポケットに残った最後のコインで自動販売機のジュースを買い、それをグッと飲み干した直後に、そのままポックリとあの世へ旅立つというイメージです。

“世間の常識”に縛られて「子どものために、1円でも多く遺そう」と考えて、自分自身の人生を楽しむことを後回しにしてしまうのはあまりにももったいない。

せっかく働いて貯めたお金なのだから、生きているうちに使うべきです。

もちろん、浪費を勧めるのではありません。

ただ、「何のために稼いだのか」と言えば、「人生を楽しむため」ということになるでしょう。

自分が何歳で死ぬのかは予想できないので、使い切って死ぬのは難しいですが、人生の最後に、「よく働き、よく使い、よく生きた」と思えたら、それが最高の人生ではありませんか。