※本稿は、須田慎一郎『財務省という怪物 「消費税」はいかにして聖域化したか』(Hanada新書)の一部を再編集したものです。
なぜゼロ化に「実質」の文字がつくのか
2026年の夏に飲食料品にかかる消費税率を8%から1%に引き下げる方針を示しました。(2026年8月執筆時点)
ただしそこには、外食と酒類は含まれません。実施期間は、2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間。
この間に限って、飲食料品にかかる消費税の税率を、現在の8%から1%へと引き下げる。外食と酒類は、これまでどおり10%のまま据え置かれます。そして、ここからが本題です。1%分の税収に当たる年およそ6000億円を、中低所得者に現金で給付する。
これによって、家計にかかる負担は実質ゼロになる――そう説明されています。「実質ゼロ化」。この案は、そう呼ばれています。
読者の皆さんに、まず注目していただきたいのは、この「実質」という二文字です。なぜ、わざわざこの言葉が必要なのでしょうか。
答えは単純です。税率が、ゼロではないからです。2027年4月以降も、スーパーで牛乳を買えば、レシートには消費税が印字されます。金額は小さくなりますが、消えるわけではありません。
税金がタダになるのは一部の人だけ
ゼロという数字が現れることは、実施される2年間で、一度もないのです。では、誰にとって「実質ゼロ」なのか。給付を受け取ることのできる、中低所得者にとって、です。それ以外の人にとっては、1%の負担がそのまま残ります。
つまりこの案は、正確に言えば「一部の人にとって、計算上はゼロと同じになる」制度なのであって、「飲食料品の消費税がなくなる」制度ではありません。
言葉というものは、恐ろしいものです。「実質ゼロ」と繰り返し報じられれば、多くの国民は「食料品の消費税がなくなるらしい」と受け取ります。「実質」という二文字は、耳を素通りしていくのです。
ここで、当然の疑問が生じます。そこまでして負担をゼロにするというのなら、はじめから税率をゼロにすればよいのではないか。
なぜ、わざわざ1%を残し、そのうえで現金を配るという、二度手間としか思えない仕組みを選ぶのか。真っ先に思い浮かぶのは、財源の問題でしょう。ゼロにするだけの余裕がないから、1%にとどめた――そう考えるのが自然です。
しかし、そうではありませんでした。決め手になったのは、レジの問題でした。

