2年5カ月でユーザーが3億人を突破したLINEの森川亮社長と、全国で住民参加型のまちづくりを進めるコミュニティデザイナーの山崎亮さん。ネットのつながりをつくるプロと、リアルのつながりをつくるプロが「コミュニケーションの未来」について語り合った。
※第1回はこちら(http://president.jp/articles/-/12081)
数値化できないところにビジネスの鉱脈あり
【森川】頭の固い人は、プロジェクトによってまちがどれだけ活性化したかを数値で示せという。
【山崎】その通りです。まちづくりの成果を、商店街の売り上げがいくら増えた、来訪者が何人増えたといった数値化できる指標で測られてしまうことが多いんです。それもたしかに活性化の一部ではありますが、僕らがコミュニティデザインにかかわるときは、むしろまちの人がどれだけわくわくしてきているか、そのわくわくがどう広がっているかといった、リサーチしにくいことを大切にしたい。お金や数字の問題が絡んでくると、まちづくりはとたんに難しくなります。売り上げを伸ばすために活動しようと言った瞬間、すーっと引いてしまうおばちゃんとか、たくさんいますからね。「まちを元気にするんじゃなくて、お金儲けのためにやるんならもうええわ」って。
【森川】きっとフェイスブックに違和感を感じ始めている方って多いと思うんですが、やっぱりSNSの世界も、提供側がお金儲けをしようとしていることがユーザーに見えてしまうと、その瞬間に引いてしまう人が多いと思うのです。そういう意味で、いまおっしゃった「楽しいところから始める」ってSNSでもすごく重要なことだと思います。お金儲けや数字を上げたいという意図が見えてしまった瞬間、そこは戦いの世界になってしまって、もはや楽しくない。ですから、あくまでもビジネスでありながら、数値化できない領域で事業を進めていくことが重要だと思うのです。
【山崎】しかし、楽しいことをビジネスとして成り立たせるのは、難しいですよね。
【森川】われわれの世界で言えば、企業もユーザーも、双方が喜べるエコシステムみたいなものをつくらないと、ビジネスとして長く続かないと思います。
【山崎】そういえば、企業名が出てくるスタンプがありましたね。
【森川】そうなんです。あれはLINE独特の広告なのですが、LINEの広告は一方的に看板を出すようなやり方はしないのです。通常、スタンプは有料なのですが、企業が提供しているスタンプは無料で手に入れることができます。そうすることで、ユーザーも嬉しいし企業もしっかり宣伝できる。双方が喜べるエコシステムの一例です。