バカになれるか、過去を捨てられるか

【山崎】僕がかかわった兵庫県の有馬富士公園は、利用者自身が公園の運営にかかわることで活性化に成功しています。かつては公園や建築物を美しく設計できる専門家が、ユーザーに公園や建築物を与えてあげていた。しかしそれでは、ユーザー側に施設に対する愛着がわいてこない。不都合な点があると、専門家に「ここを直してくれ」と苦情を言うだけ。これでは楽しくないので、いずれ公園の利用者は減ってしまう。そこで、自分もかかわったと実感できる人を増やしていこう、そういうユーザーがどれだけ増えたかをまちづくりの評価軸にしていこうという方向に、変わりつつあるんです。

【森川】おそらく、「私作る人、あなた使う人」だと、距離がありすぎて冷たい感じがしてしまうのでしょうね。使う人の気持ちがわかるためには、専門知識や経験がむしろ邪魔だったりします。楽しいサービスをつくるには、どれだけバカになれるか、どれだけ過去を捨てられるかが重要です。

【山崎】まちづくりも同じで、わくわく感や楽しさは、専門家から与えられるものではなく、自分もかかわったという実感から生まれてくるものなんです。しかもそれは、お金や数値の世界ではなく、やっぱり気持ちの世界なんですよ。これからは、専門知識を持ったプロが素人に何かを与えてあげたり教えてあげることによって売り上げや数字が上がるというコミュニケーションの形は、徐々に廃れていくのではないでしょうか。

【森川】先日、作家の辻仁成さんが面白い話をされていました。LINEのスタンプを初めて見たとき、「俺は作家だから、絶対にスタンプなんか使うものか」と思ったそうなんです。ところが奥さんと喧嘩をしたとき、スタンプを使ったらすぐに仲直りできて、「俺は作家なのに使っちゃったけど、これはすごい」と(笑)。