ダイヤモンドのような、価値あるコミュニケーション

【山崎】辻さんのスタンプつきのメッセージは、回数としてカウントすれば「おはよう」とかの他愛のない挨拶と同じく、1回の通信ということになるのでしょうが、仲直りという重要な役割を果たしたのですから質の高いコミュニケーションと言えるのでしょうね。世界中で、1日に何億回と通信が行われる中で、どうでもいい通信もあれば、ダイヤモンドのような価値を持った通信もある。今日のテーマである未来のコミュニケーションってことを考えると、そういう質の高いコミュニケーションをいかに生み出していくかが大切だと思うんです。

【森川】その通りですね。LINEとしては、やはり目の前に相手がいるような感覚でコミュニケーションできるのが理想だと思うのです。最近、テレビ電話のようなサービスを始めましたが、たとえば、海外にいる友達の誕生日に、日本の友人が集まってハッピーバースデーを歌っている動画をリアルタイムでプレゼントしたりできる。自動翻訳ツールを使えば、いずれ全世界の人とこうしたコミュニケーションが可能になります。

「延岡駅周辺整備プロジェクト」の一環でワークショップを開く山崎さん。付箋を活用してアイデアを出し合う。

【山崎】僕は、同じ空間にいて、同じ時を過ごしていることの価値は残っていくと思いますが、同時に、LINEのようなツールを適宜組み合わせることで、リアルな世界のテンションの高さを維持できるということも経験しているんです。たとえば、1回目のワークショップでわーっと盛り上がっても、1カ月たって2回目をやる頃にはすっかり冷えているのが普通なので、もう一度テンションを高め直す必要がある。ところが、その1カ月間、SNSで話し合いを継続していると、1回目よりも高いテンションから2回目をスタートできるんです。リアルとバーチャルのコミュニケーションを組み合わせることによって、ものすごく豊かなコミュニケーションを生み出せる可能性があると、僕は思っているんです。

【森川】実を言うと、LINEはリアルにこだわっているのです。LINE@というサービスがありますが、これは個店や商店街単位で情報発信できるツールで、お友だち登録をしてくれた人にクーポンを送ったりできるのです。実際、LINE@でクーポンを送った人の3割が来店してくれたというケースもあります。

【山崎】なんだか、一緒に何かやりたくなっちゃいましたね。

【森川】はい。ぜひ、コラボレーションしたいですね。

LINE社長 森川 亮
1967年、神奈川県生まれ。89年筑波大学卒業後、日本テレビ放送網に入社。ソニーを経て2003年にハンゲームジャパン(現LINE)に入社。07年から現職。小さな頃から音楽が好きで、いまも特技はドラム演奏。11年に立ち上げたLINEは、2年半で会員数3億人を突破した。
コミュニティデザイナー 山崎 亮
1973年、愛知県生まれ。studio-L代表。京都造形芸術大学教授。人と人とのつながりを基本に、地域の課題をそこに住む人たちが解決していくコミュニティデザインを実践する。『コミュニティデザイン』(学芸出版社)など、著書多数。
(山田清機=構成 宇佐美雅浩=撮影)
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