働く女性の足を引っ張る「ルッキズム」
容姿についてアレコレ言われると、「女性が嫌な思いをする」ということ以外にも弊害があります。ドイツのメディアTagesspiegelの記事でMaxi Beigang記者は、このように指摘しました。
「家父長制の感覚がモノを言う社会では、男性が女性の体について支配し、取り締まり、品定めをするという行為がかねて当たり前のように行われてきました。このような行為は『牽制作戦』でもありました。それというのも『男性たちが求める美の基準』に女性たちが合わせようとしても、その基準がその時その時で変わることもあり、女性達は永遠にその基準に沿った体にありつくことはありません。
その結果、女性たちは年がら年中『自己改善に励まなければいけない』という心理になります。自身の体が何かのプロジェクトのようになってしまいます。また『自分が社会的に求められる存在であるか』ということに関して体が物差しになってしまうのです。(中略)女性が仕事の人脈づくりなどに励むよりも、『鼻』などの見た目を綺麗にすべく励んでいたほうが、男性にとっては都合が良いのです。なぜならば、この従来のシステムをキープすることによって、トップにいる男性は今後も男性同士で徒党を組んでいれば良いからです」
「女性の見た目が良ければそれでよし」とする思考自体が家父長制的な考え方であり、仕事をする女性の足を引っ張っているというわけです。
ドイツ初の女性首相メルケル氏の場合
約16年間もドイツの首相として奮闘したメルケル氏も世間のルッキズムの被害に遭っていました。一部のスタイル評論家から「旧東ドイツ出身の地味な科学者」と揶揄されたり、有名なデザイナーのカール・ラガーフェルドから「服の裁断をもっと正確にすべきだ」と独誌フォークスで注文をつけられたりしています。
第1次メルケル内閣中には、休暇中に訪れたビーチで、イギリスのタブロイド紙「サン」に水着に着替えているところを盗撮され、紙面に載ってしまいました。
メルケル首相(当時)に対して前述のように「服のセンスが悪い」と意見する人、体型にまで言及する人が後を絶ちませんでした。しかしメルケル元首相がそのことに対してリアクションすることはありませんでした。カメラマンによる盗撮の後、タブロイド紙「サン」を訴えることもしませんでした。
かねてドイツの政界では政治以外の内容について第三者に「あれこれ」言われても、「反論しないこと」「リアクションしないこと」が政治家としての美徳だとされていたのです。

