クマに会ったらどうするべきか
こうした被害に遭わないためにはどうしたらいいのだろうか。クマの行動が活発になる早朝や夕方、夜間にあまり出歩かない、常にクマの出没情報をチェックして「クマと出会わない」のが一番いい。だが、近年のクマによる受傷の75%は人間の生活圏で発生しているため、避けられるとは限らないだろう。
では、クマに出会ったらどうしたらいいか。クマは人が走って逃げれば本能的に追いかけてくるし、かといって応戦すればより興奮して攻撃的になる。死んだふりをしても意味がないどころか、最悪の場合は食害にあう恐れさえある。
「クマと遭遇したときに距離があったら、背中を見せないようゆっくり後ずさりをするのがいいでしょう。そうしてうまく離れることができたら、車や建物の中に逃げ込むのが理想です」と中永さん。
一方、クマとの距離が近いときは、防御のために「ダンゴムシポーズ」をとることが、身を守る最善策だという。
「ダンゴムシポーズとは、地面に小さく丸まり、両手を組んで首の後ろを覆うというものです。すべての攻撃を完全に防ぐことは難しくとも、クマが狙ってくる顔面や首筋などを守ることができます。クマも相手が攻撃してこないとわかれば、執拗に攻撃してくるということはあまりないでしょう。クマが完全に去るまで、そのままのポーズを保ってください」
もしも子どもを連れているときにクマに遭遇した場合は、うつぶせに丸まった子どもに親が覆いかぶさるようにして、同様の姿勢をとるといいそうだ。近くに木や建物があれば、その近くでうずくまると遮蔽物になる。「しかし緊急時にこのポーズをとろうといっても、実際には難しいでしょう。市民講座などでは、まず練習をしてもらっています。ぜひ自宅でやってみてください」と中永さんは話す。
「救命」から「減災」のフェーズへ
今、中永さんは「悲惨な重症者をゼロに。クマ外傷重症化軽減のプロジェクト推進へ」と銘打ったクラウドファンディングを行っている。病院に運ばれる「前段階」で傷を浅くするための減災用品の開発、および地域住民に向けた正しい防御姿勢のレクチャーなど減災教育の普及を迅速に進めていくためだという。
「減災用品は、すでに地元企業と連携し、頭部・首の致命傷を防ぐための防護帽子(キャップ/ハット)や手袋などを開発中です。クマの爪でもなかなか引き裂けないような特殊素材を使用し、その耐久性はクマ牧場のクマにひっかいてもらって検証しています。地震などの災害への備えとしても役立つものになる予定です」と中永さん。
病院での高度な救命医療だけでなく、身につける防具の開発や正しい防御姿勢の教育を通じて、「負傷そのものを浅く抑える(減災)」というアプローチが不可欠なフェーズにきているのだ。クマによるショッキングなニュースだけでなく、具体的な対策や実用的な正しい知識を、しっかりと覚えておきたい。
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