日光を浴びにくい人はビタミンD不足に注意

◯柱② 地中海食が炎症を鎮める

食事によるアプローチも非常に大切です。食事の内容は、体内の炎症の指標に影響する可能性があります。

超加工食品や精製糖・飽和脂肪酸に偏った食事は、炎症の指標の上昇と関連することがあります。一方、地中海食(魚・オリーブオイル・野菜・豆類・全粒穀物を中心とした食事)は、炎症の指標を低下させる可能性が臨床研究で示されています。ただし、それが慢性疲労症候群の症状改善に直結するかは、まだわかっていません。

炎症やエネルギー代謝、免疫の調整に関わる栄養素としては、

・オメガ3脂肪酸:青魚にはEPA・DHAが、亜麻仁油にはαリノレン酸が含まれます。EPA・DHAは炎症を調節する物質の材料になります。

トマトで調理された缶詰サバ
写真=iStock.com/Hana-Photo
※写真はイメージです

・マグネシウム:ATPを利用する反応など、エネルギー代謝に必要な栄養素です。食事の偏りなどで不足が疑われる場合は、補う必要があるか確認します。

・ビタミンD:免疫調整や骨の健康に関わります。日光を浴びる機会が少ない人は不足しやすいため、必要に応じて医師に相談し、欠乏があれば補充を検討します。

疲れると甘いもので回復しようとしていた習慣をやめ、毎食に鮭や青魚(さば缶)と葉野菜を取り入れた患者さんは、食事改善後には、炎症マーカー(hsCRP)の低下とともに症状の改善が認められました。

もちろんこれは食事だけによるものとは言いきれませんが、実感の声が挙がっています。

腸内細菌のデータから食事を考える未来

◯柱③ 腸で「免疫のブレーキ役」を育てる

食事と炎症を語るうえで欠かせない存在が「腸内細菌」です。腸内細菌は単なる消化の補助役ではなく、免疫システムの重要な調節役なのです。

腸内細菌が食物繊維を分解して産生する酪酸・プロピオン酸・酢酸などの「短鎖脂肪酸(SCFA)」は、基礎研究で、炎症を調節したり、Treg(制御性T細胞)の分化や働きを支えたりすることが示されています。

「免疫のブレーキ役」を育てる土台が、実は腸の中にあるのです。

さらに、腸は「第二の脳」とも呼ばれます。腸と脳は迷走神経や血液を通じて密接に情報をやり取りしており(腸脳相関)、腸内環境と気分・認知機能との関連も研究されています。

「腸の調子が悪いとき、なんとなく頭もぼんやりする」という感覚は、この腸脳軸の乱れを反映している可能性があります。

近年では、個々人の腸内細菌叢を解析し、その人に合った食事やプロバイオティクス(健康に役立つ効果を発揮する生きた微生物)を選択する「個別化医療(精密医療)」の研究も急速に進んでいます。

現時点での臨床応用はまだ限定的ですが、将来的には「自分の腸内環境に合わせた回復戦略」を医師と設計できる時代が来るかもしれません。

将来は、個人の腸内細菌データを食事の提案に役立てられる可能性があります。ただし、現時点では腸内細菌の検査だけで、疲労回復に最適な食事を決めることはできません。