「腫瘍マーカー」だけで“遅れた”事例も
腫瘍マーカーとは、がん細胞がつくり出す物質などを採血や尿検査で測る検査のことだ。健康診断や人間ドックのオプションとして選べることも多い。
「しかし私は、腫瘍マーカーだけでがんか否かを判断するのは危険ではないかと考えています。実際、厚生労働省が、がんによる死亡を減らすべく、科学的根拠に基づいて定めた指針においても、大腸がんや胃がんなどの早期発見を目的とした腫瘍マーカーの検査は記載されていません【5】。もちろん、世界基準のガイドラインにも推奨されていません。厚生労働省が推奨しているのは、便潜血検査のみです。
もっとも、腫瘍マーカーがまったく無意味というわけではありません。すでにがんに罹患した患者さんのがんの勢いを推定するためには有効ですし、治療後の経過観察において転移の有無を調べる上で参考になります。しかし早期がんでは数値が上がらず偽陰性になる可能性が高い点や、反対に飲酒や喫煙、加齢や良性の炎症などで偽陽性になる場合がある点など、腫瘍マーカーだけを唯一の検査方法とするのはおすすめしません」
また、奥田さんは誤った検査方法によって治療が遅れてしまった例を知っているという。
「大腸がんの例ではないのですが、ある患者さんが子宮がんを疑って主治医に相談をしました。その主治医は腫瘍マーカーのみを行い、結果は陰性でした。しかしその人は日に日に顔色が悪くなり、体調不良を訴えることが多くなりました。主治医に別の検査方法を打診してみても、『私が信じられないのか』と怒られてしまったそうです。
病院を変えて別の検査を行ったところ、ステージがかなり進んでしまっていたということでした。このように、腫瘍マーカーのみで判断するのはあまりに危険が多いと言わざるを得ません」
CMの検査より「便潜血検査」を優先して
近年テレビCMでもみかける、線虫を使ってがんを発見する検査はどうか。奥田さんは次のような事実を示したうえで「科学的根拠がある検診を受けることをおすすめします」と話す。
まず、厚生労働省が科学的根拠に基づいて定めた指針に、この検査は記載されていない【5】。
また、医師などの調査チームが2024年に調査結果を公表している。全国のPET施設を対象にした調査で、この検査で「高リスク」と判定されて受診した人のうち、実際にがんが見つかったのは2%程度だった。検査が対象とする15種のがんに限ると1%以下だったという。同チームは「有用である根拠はなく、逆に大部分の方は偽陽性」と述べている【6】。
奥田さんは「便潜血検査は初歩的な検査ですが、大腸がんに関しては一番根拠がある。まずは推奨されている検診をきちんと受けてほしいです。そのうえで関心があれば、追加で別の検査を検討する。そういう順番にしていただきたいです」と締めくくった。
奥田さんが話す通り、厚生労働省が推奨する方法によって検査を行うことが早期発見への近道だといえそうだ。
<参考文献>
【1】国立研究開発法人国立がん研究センター「がん情報サービス 大腸」
【2】国立研究開発法人国立がん研究センター「院内がん登録生存率集計結果閲覧システム」
【3】厚生労働省「大腸がん検診について 第46回がん検診のあり方に関する検討会 令和8年3月23日(月)」
【4】読売新聞「大腸がんの便潜血検査、便採取を2日分から1日分に変更へ…がん発見割合に差なく負担を軽減」
【5】厚生労働省「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」
【6】PET&PET 日本核医学会PET核医学分科会「PETがん検診と線虫検査に関する多施設調査」
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