賢明なリーダーは支配型、尊敬型を使い分ける
こうした状況を踏まえ、一部の新世代のリーダーたちは、尊敬型のアプローチへの転換を果たしている。元米軍司令官のスタンリー・マクリスタルは、イラク侵攻後のアルカイダとの負け戦を経て、米軍に柔軟性をもたらす構造改革を実現した。
マイクロソフトのCEO、サティア・ナデラは「共感力」を軸に同社の企業文化を見直し、低迷していた株価を大幅に上げた。ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相も、就任後間もなくこう言っている。「人々を率いていくには、共感力が欠かせません。それには強さが必要です」。
こうした新たなリーダーには、彼らが強制せずとも、まわりの人間が自ら進んで敬意を示す。
ナデラも次のように指摘する。「ほかの人間の意見─特に自分と食い違う意見――が表明されると自分の権威が損なわれると危惧するリーダーがいますが、彼らは間違っています。人は自分の意見を言う機会をもらったほうが物事に積極的に取り組みます。そのほうがモチベーションが上がって創造力も発揮しやすくなり、組織全体の力が高まるのです(※3)」。
メイナーもこう言う。「支配型も尊敬型もそれぞれに適した時と場所があります。賢明なリーダーはその両方を使い分けることができます。何か計画を実行するときに重要になるのは支配型。しかし新たな戦略を考えたり、将来を予測したり、あるいはイノベーションを起こそうというときは、多様な視点が欠かせません。そういう場合、支配型は大惨事を招きます(※4)」
心理的安全性が高い文化の構築に加えて、現代の最先端組織は、効果的なコミュニケーションを促す仕組みを取り入れ始めている。
Amazonの「黄金の沈黙」
その1つは、Amazonが実践していることで有名な「黄金の沈黙」だ。10年以上前から、同社の会議は、PowerPointのプレゼンテーションやちょっとしたジョークではなく完全な沈黙で始めるようになった。
出席者は最初の30分間、その日の議題をまとめた6ページのメモ(箇条書きではなく、いわばナレーションのように筋立てて文章化したもの)を黙読する。
これにはいくつか効果がある。まず、議題を提案した人自身が、その議題について深く考えるようになる。CEOのジェフ・ベゾスはこう言う。「20ページのPowerPointプレゼンテーションを作るより、いい(中略)メモを書くほうが難しい。何がより重要かしっかりと考えて理解しておかないと、文章で説明することはできない」
※3 著者との会話より。
※4 著者との会話より。

