地位の高い者が最後に意見を述べる

しかしこの黄金の沈黙にはもっと深い効果がある。ほかの人から意見を聞く前に、新たな視点に立って議題を見直すことができるのだ。文章に書き起こすことで、会議の前に、自身の提案の強みや弱みをそれまでとは別の角度から考えられるようになる。

そして実際に会議が始まると、もっとも地位の高い者が最後に意見を述べる。このルールも、多様な意見を抑圧しない仕組みの1つだ。

ミーティングで会話を交わすビジネスパーソンたち
写真=iStock.com/shapecharge
※写真はイメージです

Amazonのロボティクス部門担当副社長を務めるブラッド・ポーターは、LinkedIn〔世界最大級のビジネス専用SNS〕の投稿で、このシンプルな戦略について、同社が世界市場において戦略的優位に立つ上で極めて重要な要素だと発言している。

「この戦略を明かしても、Amazonの秘伝を漏らすことにはならないと思う」と彼は言う。「この改革のおかげでAmazonの運営が圧倒的にうまくいっているとか、いつも的確な決断を下せているとか、ますます規模を拡張できているなんて言ったら、しゃべりすぎになる恐れはあるかもしれないが(※5)」

チームの力学を変える重要なルール

チームの効果的なコミュニケーションを促す仕組みの2つ目は、「ブレインライティング」だ。口頭で意見を出し合うブレインストーミングと要領は同じだが、こちらは各自のアイデアをカードなどの紙に書き出し、全員に見えるように壁に貼って投票を行う。

「この方法なら、意見を出すチャンスが全員にあります」と米ケロッグ経営大学院のリー・トンプソン教授は言う。「1人や2人だけでなく、チーム全員の脳から生み出されるアイデアにアクセスできるのです(※6)」

トンプソン教授は、ブレインライティングで守るべきルールはたった1つだという。「誰のアイデアか」を明らかにしないことだ。

「これは極めて重要なルールです。意見やアイデアを匿名化すれば、発案者の地位は影響しません。つまり能力主義で投票が行われます。序列を気にせず、部下が上司に媚びることなく、アイデアの質そのものが判断されるのです。これでチームの力学が変わります」

投票のあとは、通常4人のチームに分かれて次の段階に進む。ここでは話し合いをして、ほかの案と組み合わせたりしながら選ばれたアイデアを膨らませていく。

いわばブレインライティングとブレインストーミングを組み合わせた手法だが、この取り組みでアイデアの量が倍に増え、質も高くなるという研究データも出ている。

そうなる理由はもう明白だろう。ブレインライティングによって、支配型ヒエラルキーの制約から多様性が解き放たれるからだ。

※5 https://www.linkedin.com/pulse/beauty-amazons-6-pager-brad-porter
※6 著者との会話より。