悔いなく生きた人は、感謝を残していく

私の両親は他界していますが、2人ともよく似た言葉を残してくれました。

「いい人生だった。望みといえば、みんなが元気でいてくれることだけ」

病床の母に「何かしたいことはないの?」と尋ねたときも、

「ないよ。あとは兄弟が仲良くしてくれればいい。感謝しかないよ」

父も母も、病気について愚痴をこぼしたことはありません。

だからでしょうか。私の心に残った感情は、悲しみというより、悔いなく人生を生きた2人を敬う気持ちだけでした。

「やり尽くした人生は、残される人の悲しみをやわらげるのかもしれない」

両親の姿から、私はそう思うようになりました。もし、旅立つ人が否定的な言葉ばかりを口にしていたら、見送る側もやりきれない思いを抱え続けることになるでしょう。

日没時に砂浜を歩く老夫婦
写真=iStock.com/Goodboy Picture Company
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一生懸命に自分の人生を生き切ることが、残される人の心を癒やす、それが何よりのやさしさになるのだと両親から教わりました。

次の世代へと受け渡していきたいこと

人がこの世を去るときには、なにか、よくできた自然な流れがある。両親との別れを通して、私はそう思うようになりました。

精一杯に命を使い切り、「自分の人生はこれでよかった」と心から納得して、旅を終えようとする。すると、「あれもしたかった」という欲や執着は次第に薄れ、代わりに、出会えた人々への感謝があふれてくる。

やがて訪れるのは、安らかな眠りです。死を目前にしながら、自分の歩んできた道を「良かったな」と肯定できる。悔いなく生ききると、「清々しい旅立ち」という最後のご褒美がもらえるのかもしれません。

「やり残したことはない」といえるように、今という時間を精一杯に生きる。

それが、両親から私へ、そして私が次の世代へと受け渡していきたい、もっとも大切な教えです。