人間に残る仕事は「課題の発見」だけになる
このようなシステムが完成すれば、人間のすることは解くべき課題の発見と、その課題を実行するための実験の計画だけになる。人間の意を受けた生成AIが残りのプロセスをロボット実験室の助けを借りて行い、結果を人間に戻す。
従来の考え方からすると、これはもはや実験ではなく「生成AI生物学」とでも言うべきものだろう。もしこうなったら、研究は人間の手を煩わせず、疲れることを知らず実験を続けることができ、病気の治療法の発見や薬のデザインといった分子生物学的研究の速度は飛躍的に向上し、続々と新しい発見がなされるであろう。一部の極端な分子生物学者は、多くの病気が治療されて人類の寿命も飛躍的に延びるだろうとまで言っているのである。
AIが大発見をしたらその手柄は誰のものか
だが、ここで挙げた二つの例は、どちらも「人間が生成AIに何をするか指示する」という枠から出ていない。僕は大学の研究者であり、小なりといえども研究室を運営し、学生に研究テーマを与えて研究させるという役目を担っているが、仮に研究過程で学生が何か新しいことを発見しても、それは独力で発見したとは言い難い(つまり、指導教員である僕との共同研究になってしまう)。
それと同じように、AlphaEvolveと生成AI生物実験室の二つの例でも、仮に生成AIが自然法則と言い得るものを発見したとしても、それはそのような研究プロジェクトを立てた人間の発明とみなされ、生成AIが発見したとはみなされないだろう。
「人間の指示によってAIが作業する」ことを超えて、AIが生の現実と直接対峙するようになったとき、AIの発見を人間はどのように評価できるのだろうか。この問いの答えを、まだ誰も知らない。
検索時にプレジデントオンラインに関連する記事が表示されます


