「大まかに当てはまる」だけの事例
一連の失踪・死亡例には、何らかの関連があるのか。UFOや機密情報との結びつきがささやかれる中、陰謀論には慎重になった方がよいとする冷静な見方もある。
ワシントンポストは、2月のマッカスランド氏の失踪を境に疑念が一気に広がり、その後、2022年6月の古い事案までさかのぼって類似のケースとして扱われ始めたと指摘する。
「機密研究に関わった人物の不審な死や失踪」という括りで注目を浴びたことで、大まかに当てはまる過去の出来事はいくらでも取り込まれていく。現に、一件ずつ確かめていくと、必ずしも全ての事例に強いつながりがあるわけではない。
リストに挙げられているヌノ・ロウレイロ氏は、マサチューセッツ工科大学で核科学工学と物理学を教え、プラズマ科学・核融合センター所長を務めていた。彼を撃ったのは、ポルトガル時代の同級生だった。この男は2日前、ブラウン大学の教室でも銃を乱射している。
AP通信は、男はロウレイロ氏が息を引き取った日に自ら命を絶ち、2日後に遺体で見つかったと報じている。ロウレイロ氏の隣人はボストン・グローブに、「誰かが彼を殺したいなんて想像もできない」と語った。FBIとマサチューセッツ州連邦検事局は、一連の銃撃が「個人的な遺恨と精神状態」に起因するものだったと結論づけている。
同じくリストに名を連ねる天体物理学者カール・グリルメア氏も、今年2月、自宅ポーチで射殺された。容疑者はすでに逮捕されている。ロサンゼルス郡保安局は両者に面識はなかったとみており、容疑者は殺人などの罪で起訴されたが、5月の罪状認否では無罪を主張している。
捜索済みの区域で見つかった遺体
グリルメア氏の妻ルイーズさんはBBCの取材に、陰謀論を「まったくのナンセンス」と一蹴した。以前ライフルを持って敷地に入ってきた男が、近隣の通報を夫のせいだと逆恨みしたのではないか、というのが彼女の見方だ。そうであれば、専門分野を理由に狙われたとは考えにくい。
失踪の側にも、別の説明がつく例がある。カシアス氏の件では、リュックを背負って幹線道路を歩く姿を防犯カメラがとらえていたと、彼女の姪が米CBSニュースの取材に語っている。彼女は研究者ではなく事務員であったとの報道もある。仮にそうであれば、機密情報の口封じに狙われたとの見立ても崩れてくる。
今年5月、ニューメキシコ州カーソン国有林のマクガフィー・リッジ一帯で、ハイカーが遺体を見つけた。
米CBSニュースによると、昨年から行方不明だったカシアス氏と確認された。そばには、拳銃が落ちていた。
彼女は姿を消す前に、Qクリアランスを失っていた。核関連情報を扱う職員に求められるエネルギー省の最高機密資格だ。米ケーブルニュース局のニュースネーションによると、同僚が州警察に語ったところでは、資格を失った理由は夫妻が滞納していた税金だったという。
資格の変更に伴い、彼女は別の研究棟へ異動になっている。機密情報の漏洩を防ぐ口封じだったとしても、彼女はすでに機密情報にアクセスできない状態だった。
とはいえ、不審な点は残る。遺族は声明で、遺体は一度捜索が済んだはずの区域で見つかったと明らかにした。監察医は死因を頭部の銃創としたが、自殺・他殺などの区分は不詳のままで、そばに落ちていた拳銃が何を意味するのかについても、公式な判断は示されていない。
マッカスランド氏とレザ氏の行方は、今もなお分かっていない。
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