「UFOの調査」を目前に控えた失踪

「携帯も財布も鍵も持たずに玄関を出る人間が、どれだけいるだろうか」

ミズーリ州選出で共和党のエリック・バーリソン下院議員は、米ケーブルニュース局のFOXニュースでそう発言し、マッカスランド氏の失踪には不審な点があると指摘した。「私なら、芝刈りに庭に出る時さえ携帯は持っていく」

エリック・バーリソン下院議員(第118期議会)
エリック・バーリソン下院議員(第118期議会)(写真=U.S. House of Representatives/PD US Congress/Wikimedia Commons

事件説を掻き立てるもう一つの要因が、議会との関わりだ。バーリソン氏の事務所は、ある議会調査のためにマッカスランド氏への接触を図っていた。その矢先の失踪だった。「彼は我々が話を聞く予定のリストに載っていた。それなのに失踪した。だから興味を引かれた」と同氏は語る。

その議会調査とは、UFO(UAP=未確認異常現象)をめぐる記録の在りかを、政府外の保管場所も含めて追う調査だ。米政治専門紙のヒルによると、バーリソン氏は「本気で議会から何かを隠したいなら、政府のファイルキャビネットにはしまわない。民間の契約企業に渡すのだ」と述べている。

調査の矛先は、ランド研究所、MITRE(公共機関に研究開発支援を行う非営利団体)、エアロスペース・コーポレーション、MITリンカーン研究所、そしてノースロップ・グラマンのような民間の研究機関や契約企業へ向けられている。

実際にMITリンカーン研究所へは、1952年の機密ブリーフィング映像「空飛ぶ円盤の話」の提出を求める書簡を送り、30日以内に応じるとの回答を得たという。

2キロ先で見つかった空軍のスウェット

背景にあるのは、内部告発者デービッド・グルーシュ氏の「民間企業に委ねることで議会の監督を逃れている」という主張だ。ただし国防総省は、UFOの回収プログラムや、構造を解き明かすリバースエンジニアリングのプログラムがあること自体を否定しており、主張は真っ向から食い違う。

マッカスランド氏は、記録の在りかをたどるこの調査を進める上で、格好の参考人だった。

行方不明から8日後になって、自宅の東約2キロの地点で、米空軍のロゴが入った灰色のスウェットシャツが見つかった。だが、血痕などの手がかりはなく、家族ですら本人の物とは断定できていない。

一方、部屋に残された携帯電話や眼鏡とは対照的に、財布、38口径のリボルバー(回転式拳銃)、そして赤いリュックが部屋から消えていたことが判明。いずれの所在も、これまでに分かっていない。

失踪前、マッカスランド氏は「頭に霧がかかったような」不調を訴えていたと、ABCニュースは伝える。前夜に処方された睡眠薬の影響だったとの証言も、当局に寄せられている。

妻のスーザン・ウィルカーソン氏は、「ニールにリスクはあるが、認知症によるものではない」と否定している。

ウッズ警部補も「マッカスランド氏が状況の認識力を失っていたり混乱していたりしたことを示す兆候はなく、我々もそのような見解は示していない」「おそらく彼は、それでも誰よりも頭の切れる人物だっただろう」と語り、判断力が損なわれていたとの見方を否定している。