核・航空宇宙研究の周辺で相次ぐ失踪
こうした謎めいた状況から臆測が広がり、マッカスランド氏の失踪は、過去の死亡・失踪事件とも関連があるとする見方が浮上した。
実際、不可解な失踪はマッカスランド氏以前にも相次いでいる。CNNは今年4月、マッカスランド氏を含め、アメリカの機密性の高い核・航空宇宙研究につながりのある人物が10人以上、近年になって死亡したり行方が分からなくなったりしていると報じた。ワシントン・ポストは同月時点で、不明・死亡者は少なくとも12人に上ると報じている。
一部の失踪例には、共通点がある。アメリカの核兵器開発を担うロスアラモス国立研究所のメリッサ・カシアス氏は、自宅に私物を残したまま行方不明になった。不可解なことに、部屋に残された携帯電話は初期化されていた。同研究所で建設作業の監督を務めていた退職者のアンソニー・チャベス氏も、何ら遠出の準備をした形跡がないまま姿を消している。
似たような失踪事件は、ほかの職場でも起きている。ポリティファクトによると、製薬大手ノバルティスで化学生物学を担当していたジェイソン・トーマス氏も、洗面台に携帯電話と財布を置いたまま行方が分からなくなった。
FBIは今年4月、同局が主体となり、一連の死亡・失踪事例に関連性があるか調査を進めていると明らかにした。エネルギー省や国防総省、州・地元の法執行機関と協力して究明を進めているという。
山頂で姿をくらませたNASAの研究者
NASAジェット推進研究所でロケット推進を専門とし、材料処理部門のディレクターを務めていたモニカ・レザ氏(60)。彼女は、あとは下るだけという山道の途中で消えた。
2025年6月22日、カリフォルニア州。ヨガ仲間の男女2人と登った、エンジェルス国有林のウォーターマン山でのことだ。登りにおよそ2時間、下りに1時間と所要時間こそ短いが、道程はそれなりに険しい。2人のうち女性の方が、途中で引き返している。その後の下山のさなかに、レザ氏はいなくなった。
山頂の標識を手にした一枚の写真が撮影されているが、それが彼女の姿をとらえた最後の一枚になった。同行の男性は、急な坂を下っている最中に彼女が消えたと説明している。走るように下っていたという話も伝わるが、遺族は米LA地域誌のロサンゼルス・マガジンに「とても冷静な人で、危険を冒すタイプではない」と否定する。
残された手がかりは少ない。回収された遺留品はニット帽ひとつだけ。捜索犬がにおいをたどることができたのはそのニット帽までだったと、ロサンゼルス・マガジンは伝えている。ニット帽が発見されたのは、同行者の説明で彼女が消えたとされる地点だ。
しかも落ちていたのは、登山口でも何でもない、より危険な南側の方角だった。たどり着くには道を外れ、藪と原野を抜けるほかない。地形を知る彼女が、わざわざそちらへ向かうとは考えにくいと遺族は言う。
動物に襲われた形跡は発見されなかった。捜索を経てなお、衣類の切れ端も、リュックも、何も出てこない。

