アメリカの報告書に記された「利上げ要求」

今後、円安に歯止めはかかるのか。

為替介入は、当局が市場で円を買い上げて相場を押し戻す行為にすぎない。その効果は、円売りの勢いを一時的にそぐところまでに限られる。

そもそも円が売られる大きな要因は、現在金利の低い円より高いドルへ資金が向かうことにある。金利差が縮まらないかぎり、投機筋はいずれまた円を売る。円安を根本的に是正するには、日銀が利上げして日米の金利差を詰めることが有効だ。

そこでアメリカは、円買いに加わるのと並行して、日銀に利上げを促してきた。7月24日の為替報告書には「金融政策の正常化は、為替レートの過度な変動を抑える上で有益である」と明記されている。

ベッセント氏はCNBCの番組で、介入は市場にシグナルを送るうえで有用だとしつつ、最終的に決め手となるのは経済政策だと語った。介入の効果は短期的に変動を抑えるにとどまり、その後に日本側の政策対応が必要になる、との立場だ。

スコット・ベッセント米財務長官と片山さつき財務大臣
片山さつき財務大臣とベッセント米財務長官(写真=The White House/CC-PD-Mark/Wikimedia Commons

金利差が縮んでも円安は止まらない

日銀はこれに応えつつある。

ロイター通信は、7月の会合では政策金利を1%に据え置いたものの、これまでで最もタカ派的な発言を行ったと報じる。植田和男総裁は、基調的な物価が2%目標に近づいているとして「これまで以上に上振れリスクに注意を払う必要がある」と述べた。

市場の注目は9月の次回会合に集まっているが、とはいえ、現時点で投機筋が利上げを確信しているわけではない。フィナンシャル・タイムズによれば、デリバティブ市場が示す9月利上げの確率は7月末で約40%、8月上旬でも50%程度だ。

仮に利上げが実現したとしても、それで円安が止まるとは限らないのが実情だ。金利差はあくまで円安要因の一つにすぎない。日米の金利差はこの数年で縮んでおり、それでも円安は止まっていない。米財務省は今回の報告書で、金利差の縮小にもかかわらず円安が続いていると指摘している。

市場がより重く見ているのは、日本の財政状況だ。債務残高は対GDP比で先進国最悪の水準にあり、そこに高市早苗首相の積極財政が加わった。原油高に加え、積極財政の財源として国債の増発に向かうのではないかという投資家の警戒が、円を1ドル164円近辺の40年ぶり安値付近まで押し下げたとフィナンシャル・タイムズは伝えている。

片山氏も7月28日、来年度予算編成に向けた国債発行について、現時点で上限を設けない考えを示している。同時に「異常な、投機的な相場を国債市場において招くことがないということは非常に重要」とも述べ、金利上昇を避けられる範囲に発行額を抑える余地を残した。介入のわずか2日前のことである。

一時的に円高方向へ戻した円だが、28年ぶりとなる円買いの日米協調介入を経て、新たな局面の到来となるか。欧州の信頼を犠牲にして行った協調介入をもってなお、円相場の行く末に不安が残る。

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