なぜ死を覚悟すると人生が輝き出すのか

死は誰にでも訪れるものであり、いずれ自分も当事者になる。頭では理解していても、いざそのときのことを考えると不安になるものです。死と向き合うのは怖いので、そんなことは忘れたふりをして、日々の生活を穏やかに過ごしたいと思う人もいるでしょう。もちろんそれも一つの生き方です。

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一方で、哲学者のハイデッガーは、死から目を背けることを「非本来的」な生き方であると指摘しました。人間は必ず死ぬという運命を自覚的に受け入れる「先駆的覚悟」を持つからこそ、自分が存在する意味や価値を理解し、「本来的」な生き方ができると説いたのです。その点で言えば、かつての日本は、先駆的覚悟が文化として根付いた国でした。それを象徴するのが、『葉隠はがくれ』にある「武士道といふは、死ぬ事と見附けたり」という一文です。

いつ死んでもいいという覚悟を決めれば、むしろ気持ちが楽になり、余計なことを考えず日々の務めを存分に果たせる。つまり死を意識することは、決して悲観的でも後ろ向きなことでもなく、より良く生きるための文化的作法として共有されていたのです。

(構成=塚田有香 撮影=川しまゆうこ イラストレーション=米山夏子)
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