日本の賃金と生産性のギャップは最悪
資本主義経済は1800年代以降、GDPと賃金がともに成長するという教科書どおりのモデルにおおむね従ってきた。正常な自己修正のプロセスによって、大きな逸脱が避けられていた。その後ここ40年のあいだに、何かが変わったのだ。多くの先進国で、賃金の上昇が生産性の上昇に大きく後れをとるようになった。
それでも、イタリア、フランス、イギリス、デンマーク、フィンランドといった国では、想定どおりに動向が推移してきた。
図表2のグラフで斜めになった線は、生産性の上昇に見合って賃金が上昇している状態を示している。多くの国が斜めの線より下に位置している。日本の賃金と生産性のギャップは、明らかに最悪だ。
「犯人」はテクノロジーと貿易と移民?
このような状況はすべて、人ではないものの力による結果だ、とするエコノミストもいる。まずテクノロジーによるものであり、それほどの影響力ではないものの、グローバル化によるものだという。
パーソナル・コンピューターやインターネットが普及し工場の自動化が進んだため、未熟練労働者と中程度の技能の労働者に対する需要が少なくなったのだと論じる。コンピューターによって、事務職の多くが削減された。自動車産業では、数十年前なら3人の労働者を要した生産業務を一人でできるようになったため、雇用が大幅に落ち込んだ。
テクノロジーと貿易がすべての、または主要な要因だとするなら、政策立案者は現在の傾向に歯止めをかけようにもなすすべもないだろう。一般の労働者は、人でないものに責任を負わせるより人間を責めたがるものなので、ドナルド・ドランプやフランスのマリーヌ・ル・ペン、参政党といった扇動的な政治家や政党は、とくに肌の色が違う人たちの国がかかわる貿易や移民、外国企業のせいにしたがる。人々が移民と輸入こそが犯人だと思い込んでいるなら、強権的指導者が問題を解決できると考えるだろう。
実際には、テクノロジーも貿易も移民も現状の説明にはならない。過去にも、労働力の削減につながるようなテクノロジーの大きな進歩は何度も見られた。そのことによって賃金が一時的に悪影響を受けたとしても、時がたつうちに、ほぼかならず市場が自己調整されていった。

