正社員の実質年収も515万円→500万円に
このあと詳しく述べるとおり、賃金をふたたび上昇させるために日本政府ができることはたくさんある。最低賃金引き上げの加速、男女間での、また正規・非正規労働者間での同一労働同一賃金を義務づける法律の執行、失業者が新しい雇用を見つけられるよう支援する、いわゆる「積極的労働政策」の実施だ。
ところが、安倍晋三は、法人税を引き下げるいっぽうで消費税を2倍にして、人々をいっそう困窮させた。これが、企業の賃金緊縮政策とあいまって、正規労働者の年間賃金と諸手当を合わせた物価調整後の金額が1996年の515万円をピークに2024年には3パーセント近く低下し500万円にまで下がっていることの要因である。GDPが伸び悩んでいるのももっともだ。
じつのところ、ここ10年にわたる低成長率をなんとか維持するためだけでも、日本政府は「最後の手段」に頼らざるをえなくなっていた。それは財政支出を拡大することであり、そのため、2015年から2025年にかけてのGDP増加額の50パーセント以上を財政支出の増加が占めている。低賃金によって、日本は赤字依存症に陥った。
減税をめぐり、転向した高市首相
2024年の衆議院選挙と2025年の参議院選挙で、自民党は衆議院、参議院とも過半数を失った。選挙戦で野党は、(全品目もしくは食料品に対する)消費税率を一時的に引き下げるよう訴えていた。自民党は消費税引き下げに反対の姿勢を示し、石破は辞任を余儀なくされた。
石破の後継者を決める自民党総裁選で、高市早苗は選挙運動期間中に減税反対の態度を表明していた。ところが首相になり、主要野党が食料品に対する消費税を恒久的に撤廃することを訴えはじめたとたん、食料品に対する消費税を2年間ゼロにする時限措置を支持したのだった。ただし、それにかわる財源として赤字国債をあてることはしないと約束した。
地滑り的勝利をおさめたことで、高市は国会で野党の票を集めるために自分が望む以上のことをしなくてもよくなり、また自民党の財政タカ派と財務省をおもんぱかってやりたいことを手控える必要もなくなった。
財務省はこれまでずっと、たとえ一時的にであったとしても消費税を一部減税することには反対で、それは一時的が無期限になるのを恐れているからだ。
