労働党の女性議員たちは批判しなかった

批判の声を上げたのは現地保守系の野党議員で、政権を担う中道左派の労働党ではなかった。自由党のジェーン・ヒューム上院議員(副党首)は、現地テレビのインタビューでこう語った。

「発言そのものがひどかった。性差別的で、不気味だった」

首相側近のある閣僚は朝の情報番組でアルバニージー首相を擁護し、山上氏の解釈を「完全な誤解だ」と全面的に否定した。

首相周辺は、高市氏について侮辱的なことは何も言っておらず、挑発的な発言はすべて司会者によるものだと反論している。首相はもともと話すときによく手を使うとも語り、それが誤解を招いたと。現地メディアから取材依頼を受けた現地日本大使館は静観し続けた。

令和8年5月4日、アンソニー・アルバネーゼ首相主催の日豪首脳会談夕食会(出典=首相官邸ホームページ)
令和8年5月4日、アンソニー・アルバネーゼ首相主催の日豪首脳会談夕食会(出典=首相官邸ホームページ

「不快感を表明しておくべきでした」

こうした流れをどう読むか。世界屈指のシンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」日本部長でオックスフォード大学准教授のクリスティ・ゴヴェッラ氏は、より大きな文脈を指摘する。

「今日の極めて不確実で困難な外交環境のなかで、日本の指導者たちは、安定を保つために、主要な同盟国やパートナーとの関係において実利的なアプローチを取る傾向にあります」

前出の山上氏は筆者の取材にこう答えた。

「文書にするかどうかはともかく、(日本大使館などは)一定の不快感は表明しておくべきでした。対等な主権国家同士の関係では、オーストラリアのような友好国であっても(そうした措置は)必要ですし、むしろ友好国だからこそ、胸襟を開いて、自分にとって愉快でないことはしっかり指摘しておくべきです」

さらに山上氏は、この一件の本質をこう表現する。

「要するに、日本が軽んじられたわけです。アメリカの大統領や中国の国家主席からの贈呈品だとしたら、オーストラリアはこんな扱いをしたでしょうか。日本の首相、しかも女性の首相であるからこそ、ジョークのネタに使われた。残念ながらそれは否定できないと思います」