「伝えたつもり」から抜け出す方法

こうしたズレは、どちらか一方が悪いわけではありません。

ただ、言葉の定義が共有されていないだけです。そのため、抽象的な表現を減らして具体的な言葉で伝える技術が欠かせません。

「ちゃんとやってください」「早めにお願いします」といった表現は、曖昧です。相手はなにを基準に行動すればいいのかわからなくなります。これを防ぐためには、「なにを」「いつまでに」「どの状態にするのか」を言葉にして伝える必要があります。

ですが、どんなに具体的に伝えても、「伝えたつもり」からは抜け出せません。

そこで必要になるのが、相手の頭のなかにあるイメージを確認する作業です。説明した内容が相手の頭のなかで、どのような形になっているのかを確かめます。

「いまの説明を聞いて、どういう進め方を想像しました?」

確認のひとことを入れるだけで、認識のズレを早い段階で見つけることができます。

さらに、伝え方を安定させる技術として有効なのが「要約」です。

話の途中や終わりで短く整理するだけで、相手の理解度は上がります。

簡単にいうと……/つまり……/要は……

人は会話のなかで細かな情報をとりこぼすことがありますが、要約が入ることで重要なポイントを再確認できます。

会話の主語は相手にある

もう一つ忘れてはいけないのが、相手の立場から言葉を組み立てる視点です。自分の事情だけを中心に話すと、相手は協力する理由を見つけにくくなります。しかし、相手の状況を踏まえて言葉を選ぶと、同じ依頼でも受けとられ方が変わります。

時間が限られているので、この部分を優先して……

「なにを言ったか」では、主語が自分になります。「どう伝えたか」は、相手が主語になります。「相手がどう解釈したか」の意識だけで会話力は上がります。

言葉の選び方は、人間関係を安定させる技術です。

正しいことでも、伝え方が荒ければ相手は不信感をもちます。反対に、少し言葉を整えるだけで、同じ内容でも受け入れられやすくなります。

伝える力とは主張の強さではなく、相手が理解しやすくなるように言葉を組み立てることです。

【人間関係の作法】会話の主語は相手にある