※本稿は、髙津臣吾『愛と哀しみのスワローズ』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
新米監督として意識していたこと
2019年シーズンが終わり、僕が最初に取り組んだのは、「2020年をどう戦い抜くか?」という設計図を描くことだった。
野村克也監督は、スワローズ監督就任時に「1年目に種を蒔き、2年目に水をやり、3年目に花を咲かす」と、「3カ年計画」を口にした。
もちろん、こうした長期的なビジョンも大切だけれど、当時の僕の頭にあったのは、「今年をどう変えるか?」という一点のみだった。19年のチーム状態は、あまりにも酷すぎた。防御率も打率も、そして守備率もリーグワースト。
これでは、少々のリフォームでは太刀打ちできない。そこで、一度すべてを更地に戻し、土台から作り直すことを、僕は決意した。柱がボロボロのまま屋根を塗り替えても、すぐに崩れてしまう。
一度更地にするのは勇気がいる作業だが、同じことの繰り返しでズルズルと負け続けることだけは、絶対に避けたかった。
まずはチームの「組閣」から始めた
チームを作り直す上で、僕が最初に取り組んだのは「組閣」だ。
まずは、ヘッドコーチを宮出隆自に依頼した。彼は入団当初からよく知る仲だが、何より「厳しさの質」がいい。選手に対して厳しく当たるときも、相手の気持ちを汲み、パッと切り替えて次に進める。
「選手に嫌われない厳しさ」とでも言えばいいのか、人間として信頼できる彼を、組織の要に据えたかった。
その一方で、選手に寄り添う役割も不可欠だ。「ゴリ」こと、石井弘寿や、数々の名選手を育てた大ベテランの杉村繁さんは、技術指導はもちろん、選手の悩みや思いを丁寧に聞き出しながら進めてくれる。
河田雄祐さんや、森岡良介は人情味がありつつ、要所でパッと適切な言葉を投げかけてくれる。コーチ一人ひとりに「厳しさと共感」の役割を期待し、チームの空気を一新するための布陣を整えていった。

