ノムさんの哲学「徹底して思考すること」
僕が監督に就任するにあたって改めて見返した、かつての「野村ノート」。驚いたのは、何十年も前に書かれたものなのに、今の時代につけ加えることがほとんどなかったことだ。
野球の奥深さ、難しさ。カウントごとの心理戦。単に「投げる」のではなく、握り、回し、離すまでのプロセスを「考える」ということ。
野村監督が提唱した「ID(データ重視)野球」の本質は、データの活用以上に、「徹底して思考すること」にあったのだと、指導者になって改めて痛感している。
時代が変わっても、通用する真理は変わらない。それを現代流にアップデートしながら、今の選手たちに伝えていくことが、僕に課せられた使命だと痛感したものだった。
恩師に恥じない野球をやっていく
野村監督は生前、「監督とは気づかせ屋だ」と仰っていた。
選手に答えを教えるのは、実は簡単なことだ。しかし、それでは本当の力は身につかない。選手自身が試行錯誤し、自分で答えを見つけるように仕向ける。そのために、監督は誰よりも選手を観察し、変化に気づかなければならない。
もし、野村さんが生きていたら、僕の采配を見て何と言っただろうか? 「話にならんな」とぼやいたかもしれないし、意外な角度からアドバイスをくれたかもしれない。
相談相手がいなくなった寂しさはあるけれど、僕の背中には常に、若松勉、古田敦也、小川淳司、真中満といった歴代監督たちの経験、そして何よりも野村監督から授かった知恵が刻まれている。
恩師に恥じない野球を――。更地から作り直す新生スワローズの歩みは、野村監督が教えてくれた「野球の楽しさ、勝つ喜び」を体現するための旅でもあったのだ。


