音楽を通して「時間意識」を養う重要性

音楽を聴くとき、それまで聴いた先行する楽章のすべての楽音が「いまでも聞こえる」人、これから続くすべての楽章のすべての楽音が「もう聞こえる」人は、今ここで聞こえている単独の音(というのは原理的にはありえないのですが、仮説として)を深く味わうことができます。

はじめて聴く曲であっても、それまでの楽音がずっと記憶されて、聞こえている人は、これから続くはずの楽想がある程度予測できる。その期待にぴたりと添った音が聞こえれば快感が訪れるし、期待から少しずれれば、そこにグルーヴ感が生じる。

音楽を愉悦するためには、できるだけ長い時間の中にいる必要がある。そうですね。もし生まれてから耳にしたすべての楽音を記憶している人がいたとしたら、その人は耳にするあらゆる音の中に、彼がこれまで聴いたすべての音楽の変奏と和音と対旋律と倍音を聴き取ることができるでしょう。