非人道的な環境から子どもを守る方法

その頃、リバプールやマンチェスターの紡績工場の資本家たちは、孤児や貧困家庭の児童を国中から集めて、低賃金の重労働に就かせていました。炭坑のような危険な労働にも従事させられました。もちろん学校になんか行っていませんから、文字も読めないし、四則計算もできない。早くに酒や博打ばくちを覚え、少女たちは売春することを覚える。そして、重労働と不摂生と非衛生的環境のせいで、早くに死にました。

マルクスはこのような非人間的な労働環境から子どもたちを守るために「労働価値説」を展開するわけですが、同じ歴史的状況から「義務教育」という理念も生まれました。発生的には義務教育というのは、「両親と雇用者によるこうした権力の濫用」(同書、377頁)から子どもを守るための装置だったのです。

ですから、日本国憲法でも「義務教育」を定めた第26条のあとに、第27条3項では「児童は、これを酷使してはならない」とあるのです。「義務教育」はつねに「児童労働の禁止」とワンセットになって存在する制度なのです。