現場のアイデアを採用しプライム上場を決定

ところが本部長などから「チャレンジングな姿勢を示すため、あえてグロースに移行するのはどうか」という意見が出たのです。これに対し、従業員から「営業や採用面を考えると、プライム市場のほうが信頼感やブランド力につながる」といった50件以上の意見や助言が集まり、プライム市場への移行が決定されました。

経営会議を社内公開する会社はあまり多くないかもしれませんが、重要な意思決定がなされてから現場から批判や懸念の声が上がることは少なくないでしょう。経営会議の全社公開は、こうした「経営は現場のことをわかっていない」という認識のズレを減らし、全従業員にとって納得感のある意思決定につなげることができるのです。

アップデートされた「20%ルール」の中身

Googleと言えば有名な「20%ルール」がGmailやGoogleマップなど数々のプロダクトを生んだと知られていますが、実は20%ルールも今やアップデートされています。

google看板
写真=iStock.com/jetcityimage
※写真はイメージです

20%ルールは勤務時間の20%を自分の関心のある分野のプロジェクトに使えるというルールでした。しかし、そのルールはあくまで奨励されていたのみで、雇用契約書に記載されるなど十分に制度化されていませんでした。

また、そもそも本業に高い目標が設定されているため、運用されていくにつれ、実質的に「勤務時間120%」になってしまったり、上司に申告しなければならなくなったりと、形骸化が進んでしまったのです。

そこでGoogleは2016年に「Area 120」という社内インキュベーション機関を立ち上げ、新規事業開発にフォーカスする組織をつくりました(注5)

安斎勇樹、水野祐『組織の成果を最大化する ルールのデザイン』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
安斎勇樹、水野祐『組織の成果を最大化する ルールのデザイン』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

その後、現在の“AIファースト”の流れを受け、事業整理によるいくつかのサービス終了を余儀なくされているものの、Googleが確かな存在感を示しているのは、時流を読むさすがの意思決定と言わざるを得ません。

もともと20%ルールは、「ポストイット」などを生み出した3Mの不文律である「15%カルチャー(ルール)」にインスパイアされたものだと言われています。

なお、日本における20%ルールは、福井県「ふくい式20%ルール」や長野県「創造的活動支援制度」など、行政職員のキャリア形成や組織の活性化を目的として導入されています。彼らは勤務時間の最大20%を使い、所属部署以外の業務や県政の企画提案に挑戦しており、他の行政にも広がりつつあります。

このように、ルールには場所や組織の特性に応じて、組織を超えて適応・順応したり、変化したりする可能性があるのです。

注5:「日経クロステック:グーグルがあの『Area 120』をリストラ、スターAI研究者の社外流出も相次ぐ」(日経BP、2022)