「強い日差し」だけではない
また、そもそも湿度が高いと、汗をかいていても体温調節ができず、脱水だけが進行するという。体の熱を放出できるのは、汗をかくことそのものではなく、汗が皮膚から気化する事で皮膚から熱を奪うからだ。
「雨の日は湿度が上がるので、逆に注意なんです」と永島さんは警告する。てっきり日差しが強い日ほど危険度が高いと思い込んでいた私のような人も多いかもしれない。
「熱中症っていうのは一義的にみるのは難しいんです。体温が上がらないと熱中症じゃないっていうのも間違っていて、脱水が進行すればそれも熱中症です。血液循環の状態や汗の状態などがトータルで保っているバランスが崩れて、汗がかけなくなったり、ぐんぐん体温が上がってしまったりするときは、もう危ない状態と言えます」
もともと外科医としてキャリアをスタートした永島さんは、術後の患者のむくみ対策をきっかけに体液調節の研究の道に進み、関連して体温調節の研究もおこなうようになった。当初はなかなか研究費がつかなかったものの、年々温暖化が進み、熱中症が社会問題化するようになると研究者も増え、永島さんは先駆的に熱中症を研究してきた第一人者となった。
深刻な熱中症になると、体の重要な臓器や組織がダメージを受け、短時間で健康状態が悪化して、死に至ることもあるという。厚生労働省の人口動態統計における熱中症による死亡数は、人口が減少傾向にあるにもかかわらず、年々増加しており、2014年と比較して、2024年の死亡者数は実に4倍にものぼっている。
年々温暖化が進む日本で、熱中症から身を守ることは、命を守ることと直結しているのだ。
1、2時間にコップ1杯が理想
水分と塩分の摂取は熱中症対策の一つだ。最近では、子どもの部活動などで「水筒にスポーツドリンクを入れてきてください」と言われることが増えた。一方で、「甘い飲み物は禁止」と指示されることもある。
糖分の多い清涼飲料水を短期間で大量に摂取することによって引き起こされる「ペットボトル症候群(清涼飲料水ケトーシス)もたびたび話題にのぼる。さらに、スポーツドリンクには塩分も含まれる。高血圧の人など、摂取に慎重な人もいるだろう。
水分摂取の注意点とタイミングについて、永島さんは、特に大汗をかかないような状況ではスポーツドリンクを摂取する必要はないという。つまり、普段の水分補給は、水や麦茶などで問題ない。
「普通に3食しっかりごはんを食べていれば、そこから必要な塩分はとれているはずなので塩分はそんなに心配はいりません。1時間未満の軽い運動の場合も、基本的には水で十分です」
永島さんによれば、人は軽度の脱水があっても喉の渇きが起こりにくく、多くの子ども達が、体重が1%減少している程度の軽度脱水のまま生活していることも報告されている。
※出典
・Amano T, Sato K, Otsuka J, et al. Seasonal changes in hydration in free-living Japanese children and adolescents. Applied Physiology, Nutrition, and Metabolism. 2024;49(10):1387–1393. doi:10.1139/apnm-2023-0464.
・Bar-David Y, Urkin J, Landau D, Bar-David Z, Pilpel D. Voluntary dehydration among elementary school children residing in a hot arid environment. J Hum Nutr Diet. 2009;22:455–460. doi:10.1111/j.1365-277X.2009.00960.x.
そこで永島さんは「のどの渇きを感じなくとも、1、2時間に1回、コップ1杯程度の水分を摂取する」ことを推奨。そもそも一度にたくさんの水分をとることは難しいし、むしろ多量の水分を一気に摂取すると尿として排出されてしまうため、少しずつが良いという。


