未来の結果を変える「失敗の受け止め方」

例えば、昇格試験に落ちて「もういいや」と投げやりになる山本拓海に、慧はこう声をかけた。

「不合格という事実は変わらない。でも、それを自分には能力がないとして終わらせるか、それともこの経験を高いジャンプをするための一時の沈み込みと捉えるか。その意味づけを決めるのは、試験官じゃなくて山本さん自身だよ」

その言葉を聞いて山本は、意気消沈していた顔を上げた。失敗を「ダメだった結果」として引きずるのではなく、「次はどうすればいいか」を考えるための材料として捉え直し始めたからだ。

過去をどう受け止めるかで、次に選ぶ行動は変わる。「自分は失敗ばかりだ」と嘆くか、「この経験があったから強くなれる」と考えるか――。その違いが、未来の結果を変える。

メンバーが失敗して傷ついたとき、その出来事をただの「挫折」のままにせず、「次へ進むための糧」に変える手伝いをすること。

それもまた、リーダーの大切な役割だと慧は強く心に刻んだ。

経験の意味づけを変える「三段階の整理」

とはいえ、起きた出来事の意味づけを変える力は、ただ漫然と仕事をこなしているだけでは育たない。慧自身、かつては多忙な日々の中で、次々と起こるトラブルをただ「処理」し続けるだけで、記憶の断片として失っていく自分に愕然としたことがあった。

経験を自分への栄養に変え、未来への橋を架けるには、意識的な「振り返りの技術」が必要なのだ。

そこで慧が取り入れたのが、週末のノートに綴る「三段階の整理」というシンプルな習慣だった。

出来事(事実):今週、何が起きたのか?(感情を入れずに書く)
解釈(意味づけ):そのとき、どう感じたか? それを自分にとって意味のある意味づけに変えられるか?
行動(未来):それを教訓にして、来週から何をするか?

ノートの空白のページにペンで書き込む人
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例えば、先週、あるプロジェクトで「大口案件の失注」という痛い出来事があった。

マネージャー以前の慧なら「失敗してしまった。申し訳ない」と落ち込んで終わっていただろう。

だが今は、ノートにこう書ける。

出来事(事実):提案が断られた。
解釈(意味づけ):悔しい。だが、こちらの熱意が空回りし、顧客の真の課題を把握しきっていなかったことに気づく「必要な痛み」だった。
行動(未来):今後の提案では、事前に企画チームも営業担当に同行し、顧客ヒアリングを徹底する。

こうして内面の揺れを言語化することで、ただの失敗は「顧客との対話の本質を学ぶチャンス」へと姿を変えた。